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[05]誰とでも寝ちゃう女・発覚のとき(2)

『海猿』という映画のなかで、主人公が見知らぬ酔っ払い女と、一夜を過ごす場面があります。女の方は記憶がなく、朝になってびっくりするわけですが、その後、さほど気に病むふうではありません。相当なあばずれですね。映画ですから、後に、主人公の恋人の立場になるのですが、世の中そんなにうまく行くかどうか。

アルコール依存症は色々な意味で、家族病と言われます。そこで、病院では家族を集めて、家族勉強会や家族ミーティングなどなどを行います。ミーティングは、治療の一つですが、愚痴をこぼすことで、ストレス発散させる意味合いもあります。

とはいえ、身内の恥を他人の前で話すのは抵抗があります。私も参加しましたが、当たり障りのない話をすることが多かったのです。入院歴○回という旦那を持つ方々などは、かなり、おしゃべりでしたけど。

この会合で、何回も顔を会わせた方で、一言もしゃべらない、50歳くらいとおぼしき紳士がいらっしゃいました。指名されても発言は全てパスです。無理に話さなくても良いのですが、かたくななまでの様子が少し気になりました。

病院では入院、通院の女性依存症患者だけのミーティングもありますが、あまり本音は言わないようです。なぜなら『お酒が飲みたくて仕方がない!』なんていったら、退院させてくれませんから。早く退院したければ、優等生の発言に限りますよね。やはり、病室で仲良くなった人とのおしゃべりで本音や、本当の事情などが明かされるようです。

で、伝聞になるのですが、その紳士のお嬢さん(エルちゃんとしておきます)は、飲むと記憶がなくなるのだそうです。そして、飲んだ翌日は、ラブホテルで目を覚ますのだとか。後日、友人や同僚に「あたし、どうだった?」と聞くと「別に。そんなに飲んでないし、酔ってなかったよ」という答。友人たちと別れて以降のことは、友人が知る術もなく、彼女は何も覚えていないのです。

普通、記憶がなくなるのは、べろべろになるまで飲んだときですが、エルちゃんの場合は見た目はしっかりしているのだそうです。

私は、接待で『酒を殺して』飲んでいて、相手を見送り終えたとたん、ひっくり返ったことがあります。一挙に酔いが回ったのですが、それとも少し違うようです。『病的酩酊』というのだとか。酒乱(複雑酩酊)とは違って、人格が変化するのではなく、友人と別れて一人になると、全く別人になってしまうらしいのです。そんな、お酒のためにエルちゃんは、どこの誰とも判らぬ人の子を身ごもり、二度の中絶。そして、勤務中に異常を訴え、病院に。今度は流産でした。両親がかけつけた病室は修羅場だったでしょうね。あの紳士の態度も納得です。

エルちゃんは飲めばどうなるかが、判っていながら飲んでしまう。ここのところが、依存症なのでした。友達や同僚との飲み会は断らないし、たとえ、行ってもウーロン茶にするとかはしないのです。会社の宴席でも、男と違い、女性が『私は、たしまない(又は、不調法な)もので』と言えば、それ以上は勧めないはず(無理強いすれば、魂胆アリと思われます)。また、断るのが女の『たしなみ』でもあるんですがねぇ。

心労から倒れた母親のためにも、「早く、病気を治したい」とけなげにも言うエルちゃんでしたが、その顛末は後日。

甘木有忠


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