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[06]わかっちゃいるけど・発覚のとき(3)

井沢氏は、末っ子の三男も一流企業に就職して、傍目からは何の苦労もなく思えるのですが、ただ、奥さんが飲兵衛なのが、悩みの種でした。近所のスナックで酔いつぶれるなど、しょっちゅう。11時くらいになると、夜の巷を奥さんを捜して歩くのが日課のようになっていたんです(当時、携帯は普及してなかった)

ちょっと異常な気もしますが、奥さんは美容院を何軒も経営するやり手でして、三人の息子を大学に行かせられたのも、その稼ぎに拠るところが大きいし、そもそも、井沢氏は愛妻家なんです。文句も言わず、容認していたんですね。

そんななか、奥さんが急性膵炎で二度目の入院をしたんですね。むろんお酒が原因です。最初の三日間は、七転八倒の苦しみようでしたが、少し楽になってくると、お酒が恋しくなるんですね。見舞いに来た従業員をなだめすかして、お酒を買って来させちゃったんです。結果は強制退院です。「医者にね『奥さんはアル中です。うちではどうにもなりません』と言われましてね。うすうすは、そうじゃないかと思っていたんですが、やはりショックでした」ため息をつきながら「こうなる前に、私が何とかしなくてはいけなかったんですが」と述懐する井沢氏でした。

宇野氏が「ママがね、お酒飲んじゃったの」と小学校4年の娘さんから電話を受けたのは、二時過ぎ。勤務中のことでした。「ひどく、苦しんでいるの」と聞いては、心おだやかではありません。状況を訊くと、意識はあるようなので、「大丈夫だと思うけど、何かあったら、すぐ電話しなさい」と言って、電話を切ったのです。

「バカか。飲めないくせに飲んで」と、腹の中で(なにせ、会社にいるんですから)舌打ちをする宇野氏でしたが、何で飲んだのだろう?何があったのかと、不安でもありました。氏によれば、「私の前で飲んだのは、三々九度のときだけ」の奥さんだったのですから。今では、「トラが猫をかぶってやがった」となるのですが。

家に帰ってみると、奥さんは寝ていました。声をかけると「大丈夫」と返事があります。台所のテーブルにはビールの空瓶が1本だけ。大したことはないだろうと一安心し、夕食がまだだと娘さん達が言うので店屋物をとり、冷蔵庫を開けて、ビールとチーズを取り出したんですね。チーズを切るのに包丁をと、流しの下の戸棚をあけると、飲み薬の入った白い薬袋があったんです。なんでこんなところに?と、違和感と同時に、もしかして、この薬の副作用かも?と胸騒ぎがしたんだそうです。

もう、病院は閉まっています。そこで、近所の薬局に行き、薬袋を見せて聞いてみたんですね。「それは、嫌酒剤ですね。アル中の人が飲むやつですよ」「えっ。飲むとどうなるんです?」「酒を飲むと、ひどい悪酔いをするんです。下手をすると死にますよ」宇野氏は驚いたのですが、「大丈夫でしょう」の言葉と、「水をたくさん飲ませること」というアドバイスを受けて帰ったのだそうです。奥さんはアル中を自覚し、ひそかに治そうとしていたんですね。バレたら離婚ものですから。

勤めから先に帰っていた奥さんがビールを飲んでいるのを見て、帰宅した江本氏は驚いたそうです。昨日、子供ができたと告げると共に「もう、お酒は止めるわ」と言っていたんです。胎児はアルコール分解能力がないので、飲酒は悪影響を及ぼすのです。

「おい、なにやってんだ」グラスを取り上げようとすると、抵抗します。「明日から、止めるから」。しかし、翌日、翌々日も飲んでいるのです。「さすがに、頭にきちゃって」手が出ちゃったのです。「殴った瞬間、あっシマッタ!ですよ」。義父母に奥さんの厳重監視を頼み、実家に送り出すまで、そう時間はかかりませんでした。

タバコとお酒。急には止められません。こと、お酒に関しては男女同権はないんですね。

甘木有忠


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