カテゴリ"医療と保険"の記事

前回までは保険料の話だったのですが、肝心の医療サービスに関しては平等といえるでしょうか?保険料には不公平な側面もあることがわかりましたが、不公平なのは保険料だけではありません。例えば都会と地方の医療格差があります。田舎に行くほど一定の収入に対する国保の掛け金が高くなる傾向にあるのに、医療サービスは地方に行くほど保険料に反比例して悪くなるのは感覚的にお分かりかと思います。

前々回の試算で、神戸市の国保の保険料が高いとわかりました。ですが、神戸市は大都市ですし、立派な病院がたくさんあります。神戸市に住む人は神戸の病院が気に入らなければ近隣の大阪の大病院に行くことだってできますし、医療サービスをたくさんの選択肢の中から選ぶことができます。ですが日本の地方には、医者の常駐していない自治体もたくさんあります。そこに暮らす人たちは、同じ収入でも実は東京都に住んでいる人たちより高い保険料を負担していながら、都会に住む人が想像もできないような不便を強いられていることもあります。

地方の非都市部では、たいした産業もなく、公務員のお給料が一般企業で働く人より多いことがほとんどです。社会保険のないような零細企業に働く人が、公務員の何倍もの保険料を払い、かつ首都圏に比べて明らかに見劣りするサービスにしかアクセスできないのは、どう考えても不公平でしょう。

ただ、例えば地方の無医村に住んでいる人は、原則的には東京の大病院で診察を受けることもできれば手術を受けることもできます。そのことには何ら制限もありませんし、東京都民が受ける医療サービスの質や料金と違いもありません。そういう意味では平等です。ですが地方に住む人が通院の度に東京まで来ることは特殊なケースを除き、事実上不可能です。時間もお金も余計にかかりますし、第一、重病人ほど長距離の移動はできません。地元で同じサービスが受けられなければ意味がありません。

実はその距離感を越えて、都会でも田舎でも同様のサービスにアクセスできる方法があります。その代表がITの活用です。私はITで何でも解決できるとは思っていませんが、高齢化を迎えるこれからの時代、重要になるのは確かな話です。ですがお役所というのはどうもこの手の技術に対し不信感があるのか、なかなか積極的に活用しようという姿勢にならないようです。

ちなみに私は普段在宅で中国の会社のために仕事をしながら、パートタイムでアメリカの出版社のために英語で原稿を書き、アメリカに住む友人に文法チェックをお願いし、原稿が完成したらオーストラリアに住む編集者に原稿を送り、請求書はアメリカにある本部に送ります。インターネットやメールがなかったら、こんな働き方はできなかったと思います。逆を言えば今、ITを活用することで外国とも違和感なく仕事ができる時代です。まして日本の国内にある都市部と地方をITで結んで、医療サービスを提供することが不可能なはずはありません。今はワイヤレス聴診器で別の場所に住む医師に心音を送ることもできれば、テレビ電話で薬剤師に服薬指導を受けることもできてしまうのです。

の2回で被雇用者保険と国保の保険料について解説しました。実際に保険料を計算してみると、同じ条件でも国保では自治体によって保険料にかなりの差があることもわかりました。

それでは被雇用者保険と国保あるいは公務員等が加入する共済等を比べるとどうなるのでしょうか?これは計算方法が違うこともあり単純な比較は難しいのですが、前述の40歳、年収600万円の人が会社勤めをしていれば、保険料算定の基準となる年収もやはり400万円 (普通はそれ以下)として、その40/1000が保険料としても年間16万円です。これは国保に比べると半分以下の金額ですね。

日本の保険料の話を始める時、会社員から個人事業主になって健康保険料が高くなって驚いたとお話しましたが、まさにこの金額の違いが愕然とした理由です。

通常、会社勤めをやめても、辞めてから2年間は会社勤めをしていた時に加入していた保険組合に継続して加入することができます(任意継続)。ただし任意継続の場合は半分会社が負担していた保険料をまともに払わなければならないので、会社勤めをする時の2倍の保険料を払わなくてはいけないのです。

私が以前の会社を辞める際、人事部の同僚が、「東京都の国保の保険料を計算したら任意継続するより安いみたいだから、国保に加入したら?」と、親切に教えてくれたのですが、いかんせん私は東京都に住所はなく(彼女はたぶん他の自治体も大して変わらないと思っていたに違いない)、自分の住んでいる自治体の国保の保険料を計算したら任意継続の1.5倍以上の保険料だったと言う訳です。(つまり東京都の国民健康保険料は他の自治体に比べかなり安い)

ここで問題なのは、私の場合は進んで自由業になったので高い保険料を払うのは仕方がないのですが、非正規労働を余儀なくされ、社会保険に加入できない人が増えているという事実です。非正規労働が増えてきたのは、簡単に解雇しやすいという調節弁の役割を労働者に担わせる目的もあるのですが、雇用者が年金や保険の負担を軽減できることも理由の一つと思います。それに最近の不景気も手伝って失業して国保に加入せざるおえない人も増えているでしょう。会社を突然クビになり、収入もないのに会社勤めをしていた頃の2倍、3倍の保険料を払うことになったら、誰だって戸惑うのではないでしょうか?

前回は被雇用者保険(職域保険)についてお話しました。今回は被雇用者が失業したり、自営業になった時に加入する国民健康保険(地域保険)について書きたいと思います。

会社勤めをしていた頃は国民健康保険になじみがなく、この保険は国が運営しているものだと思っていました。ところが自分が加入する段になって調べてみると、市町村ごとに保険料が決められているということを知りました。さらには市町村の運営する保険の他に、国民健康保険組合というのも存在しており、特定の業種(医師、歯科医師、薬剤師、建設業等)に属する人は市町村の運営する国保か国保組合の保険かどちらかを選択できるようになっているのです。

ここでまた思い出していただきたいのは、保険の掛け金(プレミアム)の設定の原則です。地域保健であれば、保険を使うリスクの高い人口の多い地区は、より高い掛け金を設定しなくてはなりません。今、地方で過疎化や高齢化が問題になっていますが、どう考えてもそのような過疎や高齢化が進む自治体では、リスクの低い若者人口が多い自治体よりプレミアムを高く設定せざるをえないのではないでしょうか?また人口の多い自治体は母集団が大きくなることでリスクが分散されますが、保険料を払う人が10人しかいないような村で、1人が高額治療を受けると、とたんに村の健康保険は破綻するのではないでしょうか?

国民健康保険は、埼玉県越谷市が一般市民向けにはじめたサービスが全国に広がったという経緯があるせいか、現在でも各自治体が運営しているようです。ですが、「国保」と言いながら、実は運営しているのは国ではなく、掛け金も各自治体がそれぞれに設定しているのが実態です。過疎にあえぐ村々で、自治体だけで健康保険を運営するのは事務手続きその他いろいろな面で非効率的でしょう。どう考えてもせめて県単位くらいの規模で運営する必要があるのでは?と、思うのです。そういえば「公的医療保険の一元化」という言葉を時々見かけますが、「今のままではまずいのでは?」と、思っている人はたくさんいるということなのでしょう。

理論ばかりでは面白くないので、自治体によってどのくらいの格差があるか具体例をみてみましょう。国民健康保険の保険料は各市町村、保険組合ともホームページを調べることで簡単に確認することができます。とはいえ、一番知りたい高齢化や財政難に陥っている地方の市町村のホームページには情報がないのが残念です。そういう市町村では実際問題国保の被保険者自体があまりいないのかもしれませんね。

私は以前、カナダの大学院で医療経済学を少し勉強したことがあります。その時各国の医療制度の比較をしようとしたのですが、そもそも日本の医療制度についてよく知らないことに気づきました。私も留学前はごく普通のサラリーマン(ウーマン?)で、しかも給料明細に記載されている社会保険料が一体どういう根拠で毎月天引きされているのか、そのお金がどのような仕組みで医療費に使われているのか、全く気にも留めていなかったからです。情けないことに、気にしていたのは毎月の手取りの金額だけという状態でした。

留学から戻ってしばらく会社勤めをし、個人事業主になりました。それまでの会社の任意保険から国民健康保険に切り替える時、年収はほぼ同じなのに、保険料のあまりの違いに愕然としました。なぜそんなに違うのか、調べているうちにいろいろと面白い事実に行き当たりました。そこでこれから何回かに分けて、日本の健康保険制度についてお話したいと思います。

健康保険には会社員が加入する被雇用者保険(職域保険)と、自営業者などが加入する国民健康保険(地域保険)の2つに大きく分けることができます。さらに被用者保険には公務員などが加入する共済組合保険などがあります。

会社勤めをしている人は、通常会社が加入している健康保険組合に加入しています。日本の場合、基本的には大会社なら会社ごと(例えばトヨタ自動車、NTT、みずほ銀行等は会社が運営する健康保険組合があります)、それ以外は業種ごとの健康保険組合(東京金属事業健康保険組合、東京薬業健康保険組合、関東ITソフトウエア健康保険組合など)に加入しています。皆さんはこうした健康保険の掛け金(プレミアム)がどのように決められているかご存知でしょうか?

基本的に保険の掛け金は、リスクの高い人はより高く、低い人はより安くなるのが基本です。例えば民間の医療保険の場合、一般的に病気にかかりやすい高齢者ほど掛け金が高くなりますし、女性に比べ男性の掛け金が高くなります。糖尿病や心臓病などの慢性疾患のある方は保険の加入を断られることもありますし、事故に遭う確立の高い職業の人も同様です。

[002]アメリカの医療制度は最高?

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日本は何かというとすぐアメリカの真似をしたがるのですが、医療に関しても全く同じです。日本の政治家も官僚もなぜかアメリカの制度は一番良いと信じて疑わないのですが、実際問題アメリカの医療制度に詳しい人ほど実は良くは言わないのです。

マイケル・ムーア監督の映画で「シッコ(SICKO)」という映画が数年前に公開されました。私はなかなか良くできた映画だと思ったのですが、日本での評判は今ひとつでした。医療問題に興味のある人はぜひDVDでも借りてみて欲しい作品です。

この作品で訴えているのはまさにオバマ大統領の選挙公約にあった、公的医療界保険制度の整備の必要性なのです。アメリカでは実に国民の6人に1人が無保険。アメリカの自己破産者の多くが、高額な医療費の支払いに困って借金を重ねた挙句の自己破産。日本でも健康保険料を払えないワーキングプアが問題になっていますが、アメリカではずいぶん昔から問題になっています。

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