[44]二つの道

今後の男女において、イニシアティブを握るのはおそらく女であろう。

 女は今、二つの道のいずれかを選択することができる。「自立の道か」はたまた「男に依存する道か」のいずれかである。

 日本の女は、社会的に成功した男――つまり地位や年収のたかい者を獲得することに主眼が置かれている。これは今にはじまったことではないが、また今ほどその傾向が顕著になったこともない。

 ただし、これには最初から無理がある。
 成功した男はほんの一握りしかいない。とすれば、これらの男を獲得できるのも同数しかいないことになる。

 すると、どうだろう? 大多数の女もまたとり残される。社会的に成功しえなかった男との結婚も妥協せざるをえなくなるだろう。

 しかし、まだこれだけでは終わらない。
 男に理想を求めすぎた女は、現実と理想のギャップに日々の生活で夫に不満を感じるようになる。夫との不仲や離婚の原因に、妻が夫に過度の期待を寄せ過ぎている――というのはよくある話しだ。 過度の期待をよせられた夫も不幸だが、期待を寄せ過ぎた女も決して幸せにはなれないものだ。

 ここで女には一つの道がしめされる。
 成功は、結局は自分のちからで獲得するしかない――というものである。実際にヨーロッパの多くの国では、女は男に過度の期待を抱かなくなっている。これは、成功を望むなら自分が自立することによって獲得するしかない――ということを指している。

「自立などしなくていい」「これまで通りでいい」――といった女も決して少なくないはずだ。苦労をしてまで成功など欲しくない――といったタイプだ。
 この場合、これまでどおり、生活のあらゆる面で男に守られながら生きることになる。

 ただし、ここにも問題がないわけでない。
 誰かに守られるためには、言い換えれば報酬を得るためには、それに見合ったお返しをしなければならない。
 あなたはその部分で感謝をし、少なくとも彼らを立てなければその契約は持続的な成立をみない。それは、従来までの自然な関係でもあった。

 大切にされたから、その人を大切にしようとする。守りたい人が尽くしてくれるから、どんなことをしてでも守ろうとする。これがいくら守っても、感謝することも敬意もなくふてぶてしくしていたらどうするね? 本当に、そんな人を守りたいと思えるかね?

 最近は、家事をする妻への感謝だけがとりあげられ、夫が仕事をするのは当然とみなされている。ただ、心の領域はじつに単純な支え合いによってできている。

今の女は、男に求めすぎ、一方通行になっている。それぞれの役割にたいするおもいやりがなく、一方通行では両者とも不幸になるのは避けられない。バランスが崩れているのだ。

どちらにせよ、女は選択のときを迎えている。あなたの前には二つの道が静かにたたずんでいる。十年後には、もはや選択の余地はなくなっているかもしれないが、少なくとも今は選択することができる。

椎名蘭太郎

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