[12]暴力

痛ましい事件がおきた。兵庫県立淡路病院の院内保育室で女性保育士が日常的に幼児に暴行を加えていたのだ。詳しくは上のリンクをクリックして欲しい。

保育士が幼児に暴行や暴言 県立淡路病院

県立淡路病院(洲本市下加茂)の院内保育室で、保育士が子どもの頭を平手でたたく姿などが、ビデオカメラで撮影されていたことが四日、分かった。(2007年11月5日神戸新聞)

非常に残念だが、利用者に対する「虐待」は福祉業界では珍しくないのが現実だ。このような虐待事件が起きる度にワイドショーや新聞はしたり顔で加害者を非難するのが常だ。

そこで今回は「暴力」をテーマにしたい。だが、暴力についてまずは読者諸兄に考えてほしいことがある。暴力とは何か?虐待とは何なんだろうか?介護施設などで虐待報道があるたびに介護者が非難される。勿論暴力行為は許されない。だが、実際介護施設や家庭でも暴行に遭うのは圧倒的に利用者から介護者のケースが多い。俺が知的障害者施設に勤めていた頃、ある女性職員が180センチ以上ある知的障害者に殴られて顎の骨を折られたのを見たことがある。老人施設などではさすがに骨折まですることはないが、それでも必死の抵抗であざぐらいはできることがある。

「給料を貰っているプロなんだから我慢するべき」という意見もあるだろう。確かにそれは正論だが、実際やられてみたらとても我慢できるものではない。介護者が殴られるときはおむつ交換などどうしても必要な援助をする時、つまりは介護者が接近していて無防備な状態の時なのだ。介護者は聖人君子ではない。劣悪な労働環境に置かれて殴られても我慢できるほど人間できているわけじゃない。

「障害者や利用者が職員を暴行しても事件にならないが、職員が利用者を殴れば事件になる」介護施設などで虐待が報道される度に、俺はそう思う。報道内容が軍法会議よろしく暴行者の介護職員を一方的に非難するばかりで、その原因や本質に触れるものはない。一方で少年犯罪が明るみに出るたびに教育やしつけがなっていないと言い出す。中には悪いことをした子供を叩くのはしつけや教育の一環だという知識人も少なくない。ある場所で子供を叩けば「教育」、保育所で叩けば「虐待」。ふざけたダブルスタンダードもいいところだ。

世の中では暴力が溢れている。暴力をあれだけ非難しても、K-1グランプリやプライドはいつも大人気だし、野球やサッカーでも禁止されているはずの暴力行為が見られる。テレビでも暴力的な映画やドラマ、ニュースが流れている。人の攻撃性は何も「暴力」で表現されるわけじゃない。モラルハラスメントや誹謗中傷は新聞やテレビでも見られるではないか。人間はかくも暴力が大好きなのだ。

話を元に戻そう。これからは虐待の本質に迫りたいと思う。

(1)虐待者は真面目である

あなた方は虐待する人間はどんな人間だと思うだろうか?幼児虐待死などのニュースを聞くたびに「なんて母親だろう」「親になる資格など無い若者だ」と虐待者の人間性を問題視する事が多い。

しかし意外かもしれないが、虐待する人は真面目な人が多い。この答えには驚く人が多いだろう。

「真面目なら虐待するわけが無い!!」

しかし、俺から言わせれば「真面目」だからこそ虐待してしまうのだ。介護も子育ても多少「いい加減」な人の方が上手く行く。真面目とは逆に考えれば「融通が利かない」「柔軟性に欠ける」と言えるのだ。前出の県立淡路病院の保育士も幼児が思うように食事をとってくれないことにいらついて暴行しているのだ。そしてこの事は虐待の本質をまた表している。

(2)虐待者は追い詰められている

虐待する介護者は必ずと言っていいほど追い詰められている。「食事を食べさせなければならない」「口腔ケアをきちんと隅々まで行う」「おむつ交換をしなければならない」「今日必ず入浴させなればならない」など虐待には必ず強制が付きまとう。先ほどの県立淡路病院の保育士の虐待も幼児が「きちんと」昼食を食べないためだった。この保育士も好んで「食べる」ことを強要しているわけではない。職場や保護者などがきちんと「食べさせる」ことを保育士に強制するからだ。食べるのを拒否しているならその意思を尊重すればいいのに、「食べさせ」ようとするからこんな悲劇が起きてしまったのだ。ある意味この保育士も被害者なのだ。因みに嫌がっているのに「食べさせる」のはそれ自体が虐待だ。

(3)人権が守られていない

当たり前のことだが介護者はイエス・キリストではない。自分が殺されそうになっても相手の為に祈れるほど強くはない。哀れな子羊は自分の人権が守られていないのに他人の人権など守れないものだ。どこでもそうだが、介護職は低賃金、劣悪な労働環境で仕事している。育児などは無給に等しい。サービス残業など当たり前の状況なのだ。こんな状態では誰でも心が荒み、余裕を無くす。その状況にしているのは会社だったり、政府だったりするのだ。一概に虐待者だけを責めるのはフェアとは言えないのだ。

今回は暴力にスポットライトを当ててみた。このテーマはかなり奥深い。また機会があれば、ぜひ論じたいと思う。

エル・ドマドール

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