[124]生活保護(3)

今回はまたまた生活保護をテーマにする。第77回でも語ったように今回も本来は生活保護をテーマに挙げるつもりはなかった。もう本質については語りつくしてしまったと思っていたからだ。しかし、社会情勢が悪化するとともに生活保護がマスメディアで取り上げられる回は増加する一方だ。今回は生活保護についての新たな情報を元に語りたい。

「市民の20人に1人が受給者という実態が、果たして生活保護の本来の方向性に合っているのか。1950年から抜本的な改革がなされていないよどみがある」

予算案発表の記者会見時に大阪市の平松市長はこんな発言をしている。苛立ちを隠せないようだが、無理もない。なんせ99年には6万人だった生活保護者が今年度には13万人以上に増加。生活保護費は一般会計の16.9パーセントを占めているのだ。金額も99年の2.3倍の2800億円に達している。生活保護費が自治体予算の16パーセントを超えると言うのは驚きの数字と言う他ない。ただでさえ累積赤字で財政再建団体一歩手前の大阪市にとってこれは痛い出費だろう。だが、平松市長を苛立たせるものがまだある。

大阪市で生活保護を受ける被保護者の内、その1割以上が他の地方から大阪市に転居してきた人々だと言われている。つまり、他の自治体が自分たちが保護すべき困窮者を大阪市に押し付けている実態があるのだ。

中には「大阪なら生活保護が受けやすい」と耳打ちして大阪までのJRの切符を要保護者に渡して、文字通り厄介払いしている自治体がある。北九州市、高松市、大阪府松原市、大阪府豊中市などがそのような違法行為に手を染めている実態がある。このような「厄介払い」をする自治体は他にもある。静岡県伊東市から熱海市、小田原とそれぞれの市役所が隣の自治体の交通費を渡してたらい回しにしていた事が以前発覚した。また東北のある自治体は仙台市への切符を渡していた。しかも切符を渡す費用は財布を無くしたり困窮した旅行者など交通費が無くて困っている人に貸し付ける制度から流用していた。目的外の事に税金を使うなど納税者に対する背任以外の何物でもない。メディアの事実確認に対しても「そんな事はしていない」と平然と嘘を付いたり、「簡易宿泊所を紹介しただけ」と言い訳するなど公務員としてだけでなく人間としての最低限のモラルさえない。大阪市は「これ以上要保護者を押し付けるなら自治体名を発表する」と言ったが、そんなものとっくにするべきだ。

だが、交通費を渡してホームレスを他の自治体へ押し付けてもいずれ発覚するのは時間の問題だ。発覚すれば世論の袋叩きに遭う事は小賢しい公務員なら予見できるはずだろう。それでいてなぜこんな愚行をするのか?

冷静にそんな当たり前の判断さえできないぐらい追いつめられた地方自治体の事情がある。生活保護費の支給は国4分の3、地方4分の1を負担することが法律で定められている。今の苦しい地方自治体の財政事情ではその4分の1の負担も決して軽くはない。前述した大阪市も支出の16パーセントを生活保護が占めるのだ。どこの自治体もかつての放漫財政が災いして破綻の危機に直面していないところが少ない方だ。一昔の水際作戦(生活保護申請をなんだかんだと難癖付けて追い返すこと)などは生活保護受給者に対する反感や偏見が原因になっているところがあったが、今はもう財政面での悪化でそこまで追い詰められているのだ。ちなみに数年前にこの割合を国と地方で折半する提案がなされたが、地方自治体の猛反対でとん挫した経緯がある。

要保護者の押し付けやたらい回しを防ぐ方法は簡単だ。生活保護費を全額国庫負担にすればいい。それなら地方の醜い要保護者の押しつけ合いはやる理由がなくなる。しかし、これはまず国が首を縦に振らないだろう。「地方負担を課さないと地方は無節操に生活保護を認める」と国側は主張するかもしれない。どちらにしろ、納税者の金には間違いないのだが。

生活保護の不正受給摘発が増加するなど被保護者のモラルにも問題は多いにある。しかし、被保護者の増加でその実態を把握するためのケースワーカーは全く足りない。そして最大の生活保護破綻のトリガーは年金の破綻だろう。年金支給額の減少、年金支給年齢の引き上げ、そして年金破綻。年金が破綻すれば生活保護の原資である地方および国家財政も破綻するだろう。もう困窮者を救う最後の砦は無くなってしまうのだ。俺はこの恐ろしいシナリオを回避する方法を思い付けない。

エル・ドマドール

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[77]生活保護(2)派遣村について
[09]生活保護

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