[175]うなずきのススメ/鈴木正之助

2015年9月11日

「バカにバカって言うやつが、もっとバカなんだよ!」

日曜日の朝、4歳になる息子と一緒に、『仮面ライダー555(ファイズ)』をみていました。冒頭の台詞は、その劇中で語られたものであります。息子は変身後の戦いのシーンに夢中でしたが、私はこの台詞に心をつかまれました。

「う~む、何とも深いことを言うドラマだ。子供番組とはいえ、侮れない。」

我々は普通、多数決で決まったことを、良いことだと思っています。特に日本の場合、満場一致のシャンシャンシャンを好みます。しかし、世界は広いもの。満場一致の場合は無効とする、ひねくれた民族も存在するのです。

ユダヤ民族です。タルムードと呼ばれるユダヤ教の聖典には、そのように書かれているのだそうです。なぜでしょうか? これは、人間の多様性を前提とした用心深い思慮なのです。

「人間は、いろいろな考えを持っているのが当然。にも関わらず、反対意見が1票も入らないということは、おかしな状態と考えられる。大きな見落としがあるか、皆が正常な判断力を欠いている恐れもある。」

歴史上、幾多の厳しい判断を迫られてきたユダヤ民族の、知恵の結晶なのです。アメリカがイラク攻撃の前に、あえて反対票を投じた女性議員もいました。曰く「熱狂は危険」。民主主義のレベルが高い人だと思います。

我々は、自分と意見の合わない人をバカよばわりしがちです。しかし、これは非常にもったいないことです。私が思うに、賛成意見など聞く必要は少ない。以下同文、と教えてもらえれば十分なのです。むしろ、反対意見の方が重要で、自分の見えていない点を指摘してもらえます。逆の視点から検証してもらって、自分の考えをブラッシュアップするのが賢い方法です。

「でも、反対意見って言いにくいよね。特に、会社の会議なんかじゃ。」

分かります。でもこれは、少しずつ改善していくしかなさそうです。まずは、大げさにうなずいてみることから始めましょう。

日本人はジェスチャー不足です。会話でも会議でも、自分の話しが通じているのかどうか、はっきりしない人が多すぎます。自分と考えが違っても、とりあえず、うなずいておけばいいのです。「うんうん」、「なるほど」、「言ってることは分かる」などと。皆が仏頂面でいるから、反対意見が出にくいのです。ニコニコ笑って意見を聞いて、それから反論すれば良いのです。

マイクロソフトのビル・ゲイツ曰く「意見を言った時、皆に大笑いされる程でなければ、斬新なアイディアとは言えない」。う~ん、なるほど。皆さん、あなたの回りにいるバカを大切にしましょう。バカは貴重です。

鈴木正之助

鈴木正之助のコラム
「IT暴言」