[118]褒め上手

自分に部下がいる場合、また人事部などで人をうまく動かすことが仕事の人は「褒めること」を研究しましょう。人間褒められて嫌な気分になる人はまずいません。褒め殺しで人を動かす、これはある意味で正しいです。

「やってみせ言って聞かせてさせてみてほめてやらねば人は動かじ」という名言があります。これは太平洋戦争で司令官を務めた山本五十六の言葉です。

人に仕事をさせるには、まず自分で手本を見せる。つまり自分もその仕事がある程度できなければならないことを言っています。そしてその手順を説明しポイントを説明し、言って聞かせるわけです。次にその仕事を実際にさせてみる。最初は失敗もするでしょうが、そのなかでもよくできたところを一つ見つけてそれを褒める。するとその人はやる気を起こし、どんどん上達し仕事ができるようになる。まさに名言です。

これは部下に対してだけではありません。どんな状況にも利用できます。例えば友人から相談を受けた場合、相手の話をまず聞きます。そしてその話を分析し、その人のいいところ良かった部分を見つける。そしてそれを指摘し褒める。そうすれば少しくらい悩んでいても、そんなことを吹き飛ばすくらいの元気を与えることができます。

病気で入院したことありますか?単調な入院生活で、することといえば食事と睡眠。そんな世界では医師や看護婦さんとの会話が大きな比率を占めます。その会話の中に、患者を励ます褒め言葉が本当に力になります。特に看護婦さんは色々な仕事を抱えて大変はずなのに、嫌な顔一つせず笑顔で励ましてくれるのには脱帽です。

褒め言葉は、しかし注意しなければならないこともあります。

いつぞや出版社に企画出版の件で原稿を持ち込んだときのこと。担当者の反応はそりゃーもう褒め殺しです。絶対売れるというわけです。しかしその割には企画出版(出版費用全額出版社持ち)ではなく共同出版(出版費用折半)を奨めてくる。売れるという割にはどうもおかしいのでしばらくほっておいたのです。そしたら案の定褒め殺しのお伺いが来たのですが、この文章の中の名前が私の知らない人の名前になっている。これでピンときました。

「全ての人に同じ褒め殺しの文章を送っている」

共同出版は最初は著者側で出版費用を全額持ちます。売れたらその後は出版社で再版するという出版社にとってはリスクが少なく非常に都合のよいシステムです。危うく引っかかるところでした。

褒め言葉はうまく使いつつも、褒められ過ぎたときはちょっと注意も必要かなと思います。