[097]拇印のハナシ

ある窓口での事。かなりご年配の女性が窓口を訪れ係りのD子さんが対応しました。

D子「恐れ入りますが印鑑はお持ちでしょうか?」
婦人「印鑑が要るの?持ってこなかったのですが・・」
D子「そうですか。では拇印でもよろしいのですが」
婦人「すみません。それも忘れてきてしまいまして・・」

普通ならここで苦笑してしまうところですが、D子さんはこのご婦人に恥をかかせないよう、ニコニコしながら

「ではちょっと親指を貸してください」といってご婦人の手を取り、親指の拇印を押しました。そして無事手続きを済ませたのです。

拇印を忘れるということはありえないことですが、それをウダウダ説明するのは相手に恥をかかせるだけで両者ともに何の得にもならない。D子さんが機転を利かせることでご婦人に恥もかかせず、仕事をこなしたという点で、これこそマナーの原点といえる教科書的いいハナシ。

上記はマナーを語るときに使われる有名な話ですが、この話はちょっと前の時代の話かと思います。今は本人確認できる場合は拇印はとりませんし、単なる受け取りならサインで済ませる場合も多くあります。

銀行の場合は拇印をとる事は全くありません。印鑑を忘れたので通帳に拇印を添付してお金をおろす、ということは絶対にありえません。銀行印を忘れたら家に取りに帰るしかないのです。

唯一、役場で戸籍謄本をとるときには、印鑑を忘れた場合、本人確認のため右手の拇印をとる場合があるそうです。これも戸籍の場合にのみ限られるそうでまた役場によっても違うようです。

ちなみに、警察で調書をとるときなどに押す拇印は、右手の親指ではなく、左手の人差し指でとります。それもチョンと押すのではなく、朱をべったりとつけグルッっとまわしながら押します。

私なんか昔泥棒に入られたとき、犯人の指紋を検出するため、両手全部の指の指紋が警察に登録されています。ということで悪いことはできませんですね、はい。

話がそれましたね。相手に恥をかかせないよう機転を利かせ、D子さんのようにさりげなく行動できるようにしたいものです、というマナーのハナシでした。