[038]墓誌

盂蘭盆会(うらぼんえ)という言葉がありますが、これはいわゆる「お盆」のことです。語源はインドのサンスクリット語にある「ウランバナ」を中国語にあてたもので、したがって盂蘭盆会の字に意味はありません。

ウランバナというのは「逆さにつるされたほどの苦痛」という意味で、お盆の行事には、故人のこの苦痛を救うために行うという意味があります。お盆は7月の15日に行うのが本当であり、この日は目蓮尊者というお釈迦様の高弟が、餓鬼地獄に落ちた自分の母親の救済を行なった日に由来しています。

お盆の歴史は日本では西暦600年頃の聖徳太子のころとされ、中国でも西暦500年ごろとされています。比較的新しいしきたりといえます。今のやり方は江戸時代の頃にほぼ固まったようで、13日の夜の迎え火から始まって16日夜の送り火(精霊流し=しょうりょうながし)で終わるようです。

お盆のやり方は、地方によってまちまちで一概にはこうだとはいえません。東京では7月に行いますが、農業を行うところでは農閑期の関係で8月に行います。京都の地蔵盆は本来のお盆と意味合いが違いますがこれは旧暦の7月24日に行うことに決まっています。

その年に亡くなった人を迎えるのを「新盆(にいぼん)」、「初盆(はつぼん)」といいますが、これ四十九日(しじゅうくにち)の忌明けが終わった場合であって、忌明け来る前にお盆になってしまった場合は、翌年を新盆とします。

ところで、お盆には皆さん先祖のお墓をお参りすることと思います。お墓をきれいにしお参りが済んだら、他のお墓も尋ねてみましょう。大きな古いお墓には墓誌といって亡くなった人たちの名前が刻まれている石碑があります。石碑には戒名と俗名が書かれています。

戒名の本来の意味は、俗人から出家して、戒律を授けられたことによって与えられる仏弟子としての名前です。だからお坊さんの名はみんな戒名です。そしてこれらのほとんどが2文字です。

これとは別に、亡くなった人に付ける戒名があります。宗派によっては本来の戒名と区別するために法名ということもあります。例えば「慈唱院美空日和清大姉」とは美空ひばりさんの戒名ですが、宗教によって多少付け方が違うものの、このように故人をしのばせるものが付けられるようです。

戒名(法名)は○○院△△□□居士(大姉)と付けらますが、□の部分は俗名にゆかりの文字が使われるようです。戒名(法名)は長さによって値段が違うとも言われ本来の戒名との意味合いも含め論議の種になっています。最後の居士は位号といいますが、この文字で故人がいくつで亡くなったかわかります。以下に示します。

居士(こじ) 男性で特に信心深い人
大姉(だいし) 女性で特に信心深い人
信士(しんじ) 男性で出家せずに仏道を修めた人
信女(しんにょ) 女性で出家せずに仏道を修めた人
童子(どうじ) 7歳から15歳ぐらいの男子
童女(どうにょ) 7歳から15歳ぐらいの女子
孩児(がいじ) 就学前の男児
孩女(がいにょ) 就学前の女児
嬰児(えいじ) 男の乳飲み子
嬰女(えいにょ) 女の乳飲み子
水子(すいじ) 死産、流産した胎児