[072]京の茶漬け

「近くにお立ち寄りの際は是非お寄りください」

と常日頃いわれていても、急に訪問すればイヤな顔をされることもあります。訪問されるほうからすれば何の準備もしていないのでそりゃー困りますね。不意の訪問はなるべく避け、少なくとも前日には連絡をいれておきたいものです。

落語のネタにもなっているハナシに「京の茶漬け」というのがあります。お茶のことを京都では「ブブ」というので「京のブブ漬け」と言うこともあります。

京都では、不意のお客にお茶を出すことはほとんどなく、そのせいか京都人は非常にけちだといわれます。そして、早々に暇しようとすると帰り際に


「まあ、なんにもおへんのどすけど、ちょとお茶漬けでも・・」
と声をかけます。ここで何も知らない人は
「そうですか。ほな、いただきまひょ」
とその誘いを受けて履きかけた靴を脱いで上がりこんでしまう。そしてお茶漬けをいただくわけです。

京都では帰り際に「お茶漬けでも・・・」と誘うのは社交辞令で、それを真に受けたらかえって大恥をかく、という笑い話です。けれども、実際はどうなんでしょ?帰り際にお茶漬けでもというのも変だし、そこで社交辞令だと察すればいいのですが、本当にお腹がすいていたらいただいてしまいますよね。

最近では京都に住んでいてもこの話を知らない若者もいるようで、一つの文化といえるかもしれません。しかし、これを知らずにお茶漬けをいただいたら、そう言うしきたりも知らないとは!、と縁談が破談になったという話も聞きます。

こういった相手が否定することを前提とした社交辞令は段々姿を消す方向にあるようです。訪問先でお茶を出されたら「いえいえお構いなく」というのではなく「丁度喉が乾いていました。遠慮なくいただきます」と感謝の意を表すのが今風ですね。

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著者プロフィール

たまごや
1954年1月東京中野区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。現在茨城県にて有限会社たまごや主催。独自の視点によるコンテンツの発信と「感動の園芸・儲かる農業」をテーマとした肥料販売サイト「たまごや商店」を手がける。