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2006年5月14日

[23]そのアンケートの裏に、罠が

私が新任で入ってすぐの、四月中旬のこと。
クラス担任全員に、アンケート用紙が配られました。
保護者対象の無記名アンケートで、「はい・どちらでもない・いいえ」の三択で答える様式になっています。
内容は「朝は何時に起きますか」「好き嫌いはありますか」など子どものことから、「育児は楽しいですか」「家族とは円満ですか」など保護者自身のことまで、用紙2枚にわたって延々と設問が並んでいます。

これを集計することのめんどくささを思い、げんなりしていた私に、隣の席のベテラン教諭が言いました。
「それ、裏返して」
何を言われたのかわかりません。
「え?」
「裏に、目立たないように通し番号書いて」
やっぱり、何を言われたのかわかりません。
「誰にどの番号配るか控えておくのよ。あとで保育の資料になるから」

それは…。
それは、ヤバくないっすか???

見ると、他のクラス担任は全員、アンケート用紙の裏に小さく通し番号を書き込んでいます。
たまげました。古風にいえば、びっくりたまげたもんざえもんです。
いえ、もちろん、堅牢なカースト制度の生きる幼稚園職員室において、最下層の奴隷たる新任にはそんな暴言は吐けませんでしたが。

確かに、新学期が始まったばかりで海のものとも山のものともわからない新入園児とその家族、生活環境や保護者の考え方が手元にあれば重要な資料となるでしょう。
しかし、「無記名」ってのは、「名前は聞かないわ」ってことじゃないんすか、ねえ、先生、そうじゃないんすか、違うんすか先生、あたしも広辞苑も日本語間違ってますか、あいむじゃぱにーずあいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ!!!

青いと言われてもプロ意識がないとののしられても、私にはどうしても、識別番号をふることができませんでした。
今考えれば、こういうところが先輩がたの鼻について、その後いじめの対象にまつりあげられることになったのだと思うのですが、だって、汚いじゃん、そんなの。のっけから裏切りじゃん、そんなの。
この件に関しては今でも私は、青二才の自分に賛成です。

個人情報保護法が猛威をふるう昨今ですが、情報の商品化を防止する目的だけではなく、個人の気持ちを尊重する、という意味で、良法となることを願います。

もし、学校や幼稚園でアンケートをもらったら、ぜひ裏返してみてください。
もし、妙な番号や記号がついていたら、そこに赤マジックでシルシをつけて提出してみることをお勧めします。

間瀬美雪
アジアの身分制と差別

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