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IT暴言
第59回
顧客が本当に必要だったもの 〜 少し長めのあとがき |
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『IT暴言』は、今回でおしまいです。約2年間、どうもありがとうございました。後半は、発行のペースを乱してしまい、大変に申し訳ありませんでした。プレリリースや他マガジンへの提供分なども含めると、書いた本数は全60本。少しでも皆様のお役にたてたのであれば、嬉しいです。
全体を通して振り返ってみると、字数を多く割いているところは、『問題解決』と『コミュニケーション』についてです。特にコミュニケーションは、企業内の業務システムの開発で最も大事なことだと、私は思っています。プログラミングなどの技術力と共に、『システム開発の両輪』であると言えますね。
ところで、『顧客が本当に必要だったもの』というタイトルの風刺絵があるのをご存知ですか? 私は今年の春に知りました。開発者の間では、かなりメジャーな存在となっていますが、これほど的確に、システム開発の実情を表現しているものはないと思います。御存知ない方は、まずはこの絵をご覧下さい。(http://www.dashiblog.com/blog/archives/project_comedy_l.gif)
コミュニケーションは難しいと語りかけるこの絵、面白さが分かりますか? 苦笑いしてしまった方は、過去に苦労されたことがある方でしょう。え、私ですか? 私の場合は、あまりにも身につまされて、泣けてきました…。
顧客が本当に必要だったものは、古タイヤをロープで吊っただけのブランコ。それで十分だったのに、既に説明の段階から間違いが始まっていて、途中でアナリストやプログラマが、輪を掛けてヘンなことをやらかして…。なぜ一発で、『古タイヤのブランコ』が作れないのか? この絵を知人の建築関係者に見せたら、「ウチの業界も同じだよ…」と嘆いてました。
なぜでしょう? あまりにも色んな要因がありすぎ、到底一言では語り尽くせませんが、「創造とはかように難しいもの」であり、また一般論になりますが、「会社勤めしている人は創造的作業(プロジェクトワーク)に慣れていない」ということは言えると思います。大半の人が普段行っているのは、定型的作業(ルーチンワーク)なので、慣れていなくても当然と言えば当然ですが…。
開発のし易さから言えば、1番楽なのは『開発した当人だけが使うシステム』です。2番目は『1人のユーザーだけが使うシステム』。ユーザーと開発者のコミュニケーションが、1対1のやり取りだけで済みますからね。最も難しいのは、『立場の違う複数のユーザーに使われるシステム』です。企業の業務システムの開発は、この3番目のケースに含まれます。
昔、先輩のSEから教わったのは、「要望の又聞きをするな」ということと、「ユーザーからの要望を聞く際、上司と部下は別々にヒヤリングせよ」ということでした。要するに、同じユーザー同士でも、全く違うことを言ってきたりするのですね。「ほんとはオレ、この機能なんか要らないけど、部長が必要だって言うからさあ…」などと。
大切なのは、ユーザー全員と開発者で、『開発のビジョン(方針)』をしっかりと共有することです。さもないと、プロジェクトメンバーのベクトルが揃わず、皆が勝手なことを言い始めます。まずは、『確固たる方針』を持つこと!
しかし困ったことに、最近の情報活用系システムは、より一層、開発が難しくなってきています。これまでの、集計作業の省力化を目的としたシステムとは違い、一体何を作ったらいいか誰も明確には語れないのです。不確かなユーザーからの要望を元に、具体的な設計へとまとめていく力。これは簡単に言えば、『発明家』の仕事ですね。プログラミング能力とは、あまり関係ありません。
例えば、「自動車はどうあるべきか」とゼロから考えて、『再発明』することが出来るか? タイヤは4本、ボディーは四角などと、既存の姿に囚われた発想ではなく、お手本のないモノを考え出す力が必要なのです。ユーザーのアイディアや思いつきを元に、それを全体的に統合してコンセプトを立てて、細部を決めていく力――難しいのですよ、本当の意味での設計は。
私が当社のシステムを設計する際、考えるヒントにしたのは、「資本主義と社会主義の比較」でした。『情報』は、人に活用されて初めて『情報』となります。人間と経営のことを知らないと、情報活用系システムの設計は出来ないな、と痛感しました。それが、当コラムを書く一つのキッカケでもありました。
開発に慣れていない会社は、あまり欲張ったIT投資をしないほうが安全です。既存の安いITサービスを、いかに活用していくか考えた方がいいでしょう。しかし、複合的な業務システムを、どうしても開発しなければいけない場合は、『古タイヤのブランコ』が見えてくるまで、きちんと設計してからにすべきです。決して焦らずに。プログラミングに入るのは、それからです。
では、最後にお別れの一言。話し合いを重んじ、よりよいシステムの開発と活用を目指して頑張りましょう! ユーザーから望まれる必要にして十分なシステム、『古タイヤのブランコ』を目指しましょう! (完・合掌)
2004.11.11 |
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◆鈴木正之助
※記述が古い場合があります。自己責任にてご利用ください。 |
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