[05]仕事

夫が会社に行かなくなって半年が過ぎ、11月の初めに私達は夫の実家のある雪国に引っ越す事になった(「人妻からくり物語」第5回参照)
夫が新しい職場で働くようになったのはいいけど、生活費は0に近かった。だけど頭の中は生活の事より借り入れの支払いの事でいっぱいだった。

借りなきゃ。玄関のドアに挟まれた貸金業者がたくさん載ってるチラシを手に取る。東京の住所ばかりだ。(こういう所って危ないよなぁ)そう思っても、今自分に出来る事は借りることしか思いつかなかった。

夫の給料は前の会社の半分にも満たない。それでも引っ越したアパートの家賃は前に住んでいたアパートとそれほど変わらない。

夫の会社だけでは信用がなくて、私の実家の住所を言ってどうにか借りられそう。でも、やっぱり怪しい所だった。「おたくさんの借り入れ状況だと無理なのよ。でも、借り入れ状況を一時的に少なくして置くことが出来るから、その間に○○という所に借り入れの申し込みをしてくれる?それで、借りられたら借入額の3割を振り込んで欲しいの」というような事を言ったのだ。だけど、藁にもすがりたい心境になってる私は「はい」と言うしかなくて、向こうの指示に従った。

まず保険証のコピーをファックスしてという。そんなお金ない!「ファックス代ないんです」と言ったら「嘘でしょ、100円200円くらいあるでしょ」ほんとにナインだもん。物を買うにしてもクレジットカードだし。あ!そーいえば新規で500円で作った口座があったとホッと胸をなで下ろし、6ヶ月の娘をおぶって2歳の娘をベビーカーに乗せて銀行まで約30分歩く。雪道にベビーカーなんて不似合いだったけど。

キャッシュコーナーでカードで引き出そうとしたら、お札のみの引き出ししか出来ない。通帳も印鑑も家にある。なんてこと!とぼとぼと10度以下の寒空の下を2往復するはめになってしまった。

それからファックスだ。今なら10分歩けば目につくコンビニもその当時は全然なくてNTTに40分かけて行かなければならなかった。やっとこファックスを終えて次は審査。自宅に戻って待機。その時20万円借りられた。だから最初に電話した怪しい所に6万円振り込む。電話で報告をして終了。手元には14万円。だけど、20万円の返済。1日がかりで手にしたお金。何やってるの、私。涙が出た。

夫の実家の両親はその当時共働きだったので子供を見て貰えなかった。仕事を探すにもまず預ける所がないと。そんな時、保険会社の人が担当の挨拶に来てくれた。その時は何も思わなかったのに、それから2日後位にふと、そうだ!保険会社で働けばいい、と思ったのだ。

大抵の保険会社は営業成績によって歩合給となる。多少のノルマはあるけど、6ヶ月は見習い期間として保証給がつく。トレーナーもついてくれるので見放されることはない。そしてなにより働く人を勧誘するのも成績に関与するので働きたいと言えば大歓迎の職場なのだ。

最初は保険外交員になるための試験をクリアしなければならないけど、その試験の為の研修が2週間ほどあって、その間子供の面倒をみてくれる所もあるし、研修中はお弁当がでる所もあるし、少しだけど日当も出る。

早速その担当の人に働きたい旨を伝えて子供共々営業所まで連れて行って貰った。幼い子供がいる人が多いので和気あいあいとした雰囲気だった。バスでの通勤になるけど仕方ない。研修中に預ける所を探したら、バス停の近くに看板があったので行ってみることにした。私営の保育所でベビーホテルに近い感じ。3歳未満は1人3万円。入所時に1万円。保険会社の保証給が10万円。2人分の6万円を引けば月々の残りは4万円。だけど0よりはずっといい。

市役所で4月入所の保育所の申請をして、保険会社で半年間働いている間に、歩いてもいけるような会社を探そう。(雪道の運転は怖かったので)そう思って引っ越して1ヶ月目に保険会社に入社したのでした。

山口ひとみ
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