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第0回
己の欲せざる所は、人に施すことなかれ
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これから話す物語は、とても寒い日に人知れず起こった静かな物語です。
その日は今冬一番の冷え込みで、サクラジロウはまるで登山にでも行くような格好で街中をねり歩いていました。
本当に寒い日でした。本当に・・・
小腹がすいてきたのでラーメンでも食べようと考えたその刹那、前から一人のロシア人が歩いてきました。
そのロシア人はGパンに半袖Tシャツ一枚という格好でした。
Tシャツ一枚・・・
その日は本当に寒い日でした。本当に・・・
サクラジロウはウズウズしていました。
もう小腹がすいていたなどとは、言ってられません。
この機会を逃したら、このロシア人とはもう会えない・・・
その前に、思いのたけをぶつけてみたい・・・
「その時は自然に足が動いたんだ・・・」と後にサクラジロウは語っています。
気が付くとサクラジロウは、そのロシア人の前に立っていました。
そして、静かに切り出しました。
「Tシャツ一枚で、寒くはないのですか?風邪などひかないのですか?」と
最初 怪訝な顔をしていたロシア人でしたが、こう答えてくれました。
『サムクハナイ・・ソレニ、ワタシノ、タイチョウハ、キミニハ、カンケーナイネ』
その通りだ・・・ もしサクラジロウが道で、見知らぬ人に
「坊主で寒くないんですか(サクラジロウは丸坊主にしています)? 風邪なぞひかないのですか?」
と聞かれたら、このロシア人と同じように答えるだろう。
答えるが本当は、坊主は寒いし、風邪もひいている。
でも、見知らぬ人に本当の事は言わないだろう。
私はそう思い、そのロシア人に「ダー」(ロシア語でYESの意)と言って 別れを告げた。
人混みに吸い込まれていく、Tシャツ一枚のタクマシイ ロシア人の背はまるで
『人間はやろうと思えば何でも出来るのだよ。どう生きてもイイんだよ』
と静かに語っているようでした。
教訓―『己の欲せざる所は、人に施すことなかれ』
(自分が他人にして欲しくないことは、他人に対してもしないでおきましょう)
2002.03.01 |
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◆サクラジロウ |
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創刊:2002.03.01 |
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更新:2008.11.20 |
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