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第35回
日銀短観
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日銀短観が出た。今回はニュースなどでよく耳にする「日銀短観」について触れてみよう。
正式名称は「日本銀行短期経済観測」たっだかな。全国版とそれにあわせて地方版もある。地方版もまた味わい深いものなのだがここでは触れないでおく。
普通、景気観測というと鉱工業の生産指数や商品の在庫指数などデータを駆使した計量経済が普通なのだが、日銀短観の特徴的なところは、それらにまじって各企業の経営者への景況アンケートに主眼が置かれているところである。つまり、実際の商品やサービスが動いたというデータと日本中の経営者のナマの主観(アンケート)を組み合わせているところに最大の特徴がある。
エコノミストはややもすると、見かけの売上や生産などの数字に目を奪われて机上の景気判断をしがちであるが、現場で実際に商売をしている大企業から中小企業まで、いわゆる「社長や経理さん」たちが、足下の景気や先行きをどのように見ているかがストレートに伝わってくる。
日銀短観は「D.I.(ディフュージョンインデックス)」という統計手法をとっている。簡単に説明すると、例えば「1年後の業況予測をどうとらえますか」というアンケートに対し、「良くなる」が40%、「変わらない」が30%、「悪くなる」が30%だとしたら、「良くなる」−「悪くなる」=10ということになり、先行きについては+10という指数で表される。同じ指数でも、その前提となる数字は異なり(例えば40−30も10−0も答えは同じ)、このあたりの分析をするのがまた短観オタク達の楽しみでもある。
D.I.値は勝手な経済予測を垂れ流すお気楽エコノミスト達とは異なる判断をすることが多く(企業経営者にとって景気のヨミには生活がかかっているから)、それだけに景況を占う重要な資料として重視されてきた。たかだか1cmほどの厚さの資料であるが、内容については公表日まで一切秘匿、資料も外注作成ではなく日銀地下の印刷室でしか作らないという徹底振りである。
日銀短観は年4回、確か朝の8時ごろに日本銀行正門玄関(日本橋三越の裏手にある)にて日本語版と英語版で配布される。相場にも大きな影響があることから、配布日の早朝には、先を争って長蛇の列になったもんだ。
銀行員や証券マン、マスコミ連中、注文を受けたバイク便の兄ちゃんなどが集まって4列に並んで順番に配布を受ける。たいていは役員用・分析用など複数の部数が入り用だから、各自受け取ってもまた列の後ろにつく。日銀社員が「お一人様1部限りです」と言っても誰も聞いていない。女性社員が取りに来ている場合も多く、このときばかりは日頃殺風景な日銀玄関も華やいだもんだ。
語り口が過去形になっているのは、今はもう並ぶ人もほとんどいなくなったからである。日銀が短観をインターネット配信するようになってから、わざわざ玄関まで配布を受けに来る連中は激減した。そりゃそうだ。どんな方法よりダウンロードする方が早く入手できる。お姉ちゃん達が消えた日銀玄関を見てITの凄さと青春の終わりを実感したのはもう5年も前のことである。
ところで日本銀行は大蔵省と違ってとてもフレンドリーである。お役所的な雰囲気よりも、お公家様的な優雅さが漂う。建物自体には勝手に入っていっても特に文句は言われなかった。本館向かいには一見の価値がある貨幣博物館が建っている。三越のお買い物のついでに是非お立ち寄りを。なかなかの内容である。
日本銀行バーチャルツアー
2001.07.08 |
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◆桶川次郎 |
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