お茶の間経済学 -桶川次郎-

現役銀行員が近頃の奇妙ともいえる社会現象を、新鮮かつ斜めな切り口で解説します。肩肘はらずに楽しみながら、金融業界の打ち明け話やお茶の間経済学に耳を傾けてみませんか?

お茶の間経済学

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57 祭りの後(最終回)
56 読者のメールから
54 日本の自殺者3万人
53 だまされる奴は怠け者
52 銀行合併の果てにあるもの
51 不良債権問題の根本と解決法(下)
50 不良債権問題の根本と解決法(上)
49 今年はどうなる
48 低位株暴落の行方
47 やばいCM
46 再燃する公的資金投入論議
43 ビバ! デフレ
40 世界は踏みとどまれるか
38 最近のニュースからふたつ
37 弱者とぶらさがりの違い
36 愛の貧乏脱出作戦
35 日銀短観
34 本当の男女共同参画社会とは
33 船井幸雄面談記
32 資本主義のダークサイド
31 明日があるさ
30 通帳印鑑にご注意
29 ある老人のつぶやき
28 ユニクロの亜魂和才(和魂和才?)
27 新人に贈る
26 癒着と健全度
25 あるシナリオ−2
24 あるシナリオ
23 お笑い国会中継
22 えひめ丸事故に思う
21 長野と東京
20 もうひとつの日本シリーズ
19 大家族のススメ
18 私はどうすればいいんでしょう
17 「学生さんには金がない」か
16 聴いてはいけない
15 投資信託(投信)の話 その2
14 投資信託(投信)の話 その1
13 20世紀と21世紀
12 2001年経済予測
11 クレジットの話
10 仮想と現実のはざま
9 銀行税(外形標準課税)について
8 街金融の話
7 マスコミの落日と不信任
6 政局展望(自信なし)
5 金融マンの自殺
4 IT革命−その2
3 IT革命 その1
2 ある証券会社のCM
1 巨人優勝の憂鬱

第55回

日本の自殺者3万人


 ある友人が自殺を図った。いわゆるリストラにあった人である。彼はとにかくマジメに仕事をする人だったが、ひとつだけ欠点があった。組織に対する過度な忠誠と依存である。今回は自殺について書く。

***

 時計でもなんでもいい。機械があったとする。ある日その機械から1本のネジがとれていた。でもどの部分かわからない。とりあえず機械の調子はいいのでそのネジを捨てたとする。捨てられたネジはかわいそうか。

 仮に、外れたネジがJIS規格かなんかで汎用性があって、まだまだ利用可能であれば、他の機械の修理や製造に使用できる。特殊な形状であっても、そのネジじゃないと役に立たないパーツだって探せばあるかもしれないし、サイズや溝を作り直せば、これもまた再使用可能だ。

 じゃ、外れた時点でぼろぼろになってしまっていたらどうか。平べったくして、溝をとって釘にでも使うか。何にせよ、存在し、形があれば利用法はあるのだ。そして、場合によっては元の利用のされ方より、もっと役に立つかもしれない。いや、別に役に立たなくたって捨てることはない。

 あるサイトに掲載されていた。

  • 日本の自殺者は3年連続して年間3万人以上、交通事故死の3倍
  • 50代以上の中高年が6割を占める
  • 原因は「健康不安」が減少し「経済・生活問題」が増加
  • 自殺率は欧州各国の2倍以上の25.2人/10万人あたり・・・

となっているらしい。

 このサイトは、このあとの論旨展開で「小泉内閣の構造改革のせいだ」としている。景気低迷による企業のリストラや失業率の高止まりと日本人の中高年自殺をリンクさせているのだろう。さらに「働き盛りの自殺は社会的な大損失」「残された妻子や遺族への影響は甚大」と続く。

 しかし・・・である。悲しい出来事ではあるが、なぜそのように日本人は死に急ぐのだろう。リストラで自殺、いじめで自殺、大学受験に失敗して自殺、会社が倒産して自殺、倒産させて自殺。

 これら自殺の共通点は「組織や社会からの脱落感」ではないか。そして彼らは組織や社会や学校という狭い世界が自分の存在意義のすべてだと勘違いしている。彼らは「組織」という機械から外れ落ちた「1本のネジ」と同じだ。でも人間とネジは違うことが決定的にある。ネジは考えないが、人間はそこで考えて自らを、あるいは環境を変える力がある。

 たいていのお父さんは、会社ではさほど重要なパーツでなくても家に帰れば極めて重要なパーツである。失業して給料を運んでこなくてもそれはそれで失った機能の一部でしかないのに。自殺者は、死ぬことによって自分の存在から生じる苦しみから開放されたいだろうが、彼らは「誰かに必要とされる自分」をなぜイメージできないのだろう。自殺者はマジメで自分勝手すぎるのだ。

 今や日本の社会や企業に重要なネジはごく一部でしかない。むしろ中から外まで不要なネジだらけの組織だ。ネジ1本の立場でこの現状は打破できない。ネジが自分でできることは、

  1. 極めて重要なパーツの心臓部で使ってもらう
  2.     〃     で必要とされる特殊な形状になること
  3. 重要でないパーツで摩耗しない部分に使われること(これが一番か)
  4. 機械から脱落しても、他の機械で使用できるよう汎用品になること
  5. 材質が丈夫、ないしは大きい
  6. 摩耗し脱落したら、釘やピンや針になる覚悟をもつ・・・

ぐらいか。

 会社をクビになれば他の会社へいけばいい。自分で起業したっていい。給料が稼げなくたってそれはそれ。じっくりやっていけばいい。本当にどうにもならなければ山奥の廃村に行って自給自足の生活でもすればいいし、坊主にでもなればいい(実際そういう人が増えているそうだ)。生きてる限り次の展開がある。

 リストラ自殺予備軍はマジメな怠けものだ。日々きちんと仕事をするが、組織に所属する安堵感に逃げ込み、生き物が生来持っているはずの野生を忘れ、環境がいかに変質しやすいかという命題を避け、自分の頭で考える創造性を放棄して生きている。それは、組織に対する「信じていれば救われる」とか「教祖様のおっしゃることは絶対」という一種の宗教信仰に似た安心の感覚だ。そして、そこから放り出されたときに絶望する。

 環境は激変するし、命ははかないが、それは誰のせいでもない。そんな単純な事実から目を背けて生きていくほどツケは大きくなる。もし、自殺を考えてる方がおられたら、是非とも思いとどまってもう一度周りを見ていただきたい。あなたが死ねば悲しむ人も困る人もきっといるはずだ。そしてその悲しみが一生消えることはない。人の命はその人の所有物ではない。神様からの借り物でしかない。

2002.04.25

桶川次郎

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更新:2008.11.20
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