[1257]被写界深度

2013年5月11日

前回のコラム「焦点深度」の続きです。

よく「被写【体】深度」ということがありますが、これは誤用で正しくは「被写【界】深度」です。

被写体にピントを合わせたとき、焦点面には像ができていますが、その焦点面を前後に移動させても像がぼけない距離を焦点深度と前回いいました。これはレンズのこちら側、つまり焦点を結ぶ側の焦点面の許容範囲の話です。

これに対し被写界深度は、焦点が合っている状態で被写体の方を前後に動かしたときにぼけない許容範囲をいいます。正確には被写界焦点深度といいます。これはレンズの向こう側の話です。

たとえば、花が3本前後にずれて咲いていて、その真ん中に蜂が止まっているとします。写真を撮りたくなるよくあるシーン。

この3本の花と蜂のすべてにピントがあっている場合は、被写界深度が深いといいます。ポートレートで言えば、背景にもピントがあっているし、人物にもピントが合っている場合、などです。前後に距離があってもそれを許容してしまうので「深度が深い」というのです。

しかし、プロの写真家の写真のように、撮りたい対象物はピントを合わせ、周囲をぼかしたい場合があります。この場合は被写界深度を浅くすればよろしい。

被写界深度も焦点深度と同様に開口の広さに反比例します。つまり絞りを開けると被写界深度は浅くなるので周囲をぼかせます。逆にファインダー内の被写体すべてにピントを合わせたい場合は絞りを絞ります。そうすると被写界深度は深くなります。

この場合のシャッタースピードですが、絞りを開ける場合は光がたくさん入ってくるので速くなります。シャッタースピードが速いので手振れの心配はほとんどありません。

絞りを絞れば入ってくる光は乏しくなるので、シャッタースピードは遅くなります。シャッタースピードが遅い場合は、手振れに気をつけましょう。