[1259]竹の秋

2013年5月10日

筍(たけのこ)の季節です。竹林を歩いていると、ちょこんと頭を出している筍(竹の子)。これが明日には1mにも成長している、とよくいわれます。しかし一日で1mというのはちょっと極端で、実際には50cmほどでしょう。それでも、この成長力は驚くばかりです。

このように一瞬にして成長する植物は他にありません。この成長力の秘密はなんなのでしょうか?

よく同じようなものが乱立する光景を「雨後の竹の子」と比喩しますが、確かに雨が降ったあとの筍の成長は顕著のようです。しかし成長の理由が雨ならば、他の植物も同じように成長していいはず。筍の、このずば抜けた成長力は雨のおかげだけではないのです。

じつは、筍の成長力は、親株からもらっているのです。竹は根は意外と少ないですが、地下は網の目のように地下茎がつながっています。この網の目のような地下茎を伝って親から養分をいただいてしまうのです。

そのため、親の竹は、新緑の時期だというのに葉っぱが黄色く枯れたようになり終には落葉してしまいます。まるで秋の紅葉。然るにこの現象を「竹の秋」といいます。「竹の秋」は俳句の季語にも使われます。字句は「秋」とありますが、季節は春を表す季語です。

では「竹の春」はあるのかというと、これもあります。筍が生長して美しい姿になる初秋を「竹の春」といいます。これも俳句の季語に使われます。

筍は空気に触れる部分が少ないと、あの独特のエグミが少なくなります。したがっておいしい筍をゲットするには、筍が頭を出す前に掘り出すこと。植わっている土質も空気を取り込まない粘土質が上質な筍を産出します。ふかふかの土が何でもいいとは限らないのです。