[303]票の横流し

参議院議員を選出する選挙制度を巡って国会は大きく揺れているのはご存知でしょう。今まで参議院は比例区の拘束名簿方式をとってきましたが、ここに来て制度を非拘束名簿式にするという動きです。

比例区の拘束名簿方式というのは、政党名を投票することで、その獲得数に応じて前もって決められた名簿順に当選者が出る方式です。だから名簿の第一順位に腕の立つ政治家を上げておけば、政党に投じられた票により当選はできます。

しかし自民党のような与党の場合は、議席数が多いため、全員を当選されるには大変な数の得票数を得なければなりません。おりしも、森政権は相次ぐ失言問題で失速状態。このままでは参院選を勝ち抜けないのは間違いのないところ。

そこで、考えられたのが、非拘束名簿方式の選挙です。これは今まで政党を書いていたものが立候補者個人名でも投票ができるようになります。そして、得票数は政党と個人との合算で行なわれ、その結果、本来ならば当選しないような人まで当選させることができます。

例えば、自民党が有名人を立候補者にした場合、500万票を獲得したとするとその有名人は当選します。そしてその得票数は、政党の得票数として合算されますから、名簿にあるほかの人まで当選に導くことができます。これを、「票の横流し」といいます。非拘束名簿が通れば次の参院選は芸能人の立候補者で埋め尽くされるでしょう。

もっとも参議院というのは、色々な分野から識者を集め、それぞれの専門家に意見を聞く場です。だから芸能人や有名人が立候補してもおかしくはないのです。もちろん「識者」であることが前提になります。参議院はそこに政党という概念を持ち込むことのほうが間違っているような気がしますが。

選挙制度の改変の歴史は与党の都合に良いように改正されてきた歴史でもあります。自分に都合のいいように改変したいのはわかりますが、公職選挙法というのはいってみればゲームのルールみたいなものですから、旗色が悪くなるとそのルールを改変してしまう姿勢というのはどんなものでしょうか。

なるべくならルールは変えずに、その中で知恵を絞ってほしい思いますし、それよりそういうルール造りばかり一生懸命なのではなく、早く色々なゲーム(法案の議論)を始めてほしいと思うのですがね。

【関連記事】
[1246]衆院選2009展望