[268]辛子明太子

博多(福岡)には辛子明太子を作っている業者が約300社ひしめきあっています。しかし、その原料となる「たらこ」は北海道産がほとんど。また、味付けに使う昆布も北海道の超高級昆布である羅臼(らうす)昆布を使います。原料は北海道なのに、なぜ明太子は九州なのか?

明太子は元々は朝鮮半島で生まれたの食べ物なのです。明太(ミョンテ)は朝鮮語でスケトウダラの意味。その卵なので「明太子」(ミョンディジャ)と呼ばれました。韓国で食品店を営んでいた人(ふくや創業者)が戦争が終わって福岡市に引き揚げ、焼け野原となった博多の復興の産物として明太子を辛子などで味付けして、「辛子明太子」と名付けて売り出しました。以来50年以上経ちますが、今では押しも押されぬ博多名物となっています。これが博多名物となっている辛子明太子の始まりで、戦後復興の産物なのです。

私はめちゃくちゃ辛いぷりぷり明太子が好きなのですが、明太子に欠かせないのが「唐辛子」。もちろん有機栽培によってできる無農薬の完熟唐辛子がいいのは言うまでもありません。唐辛子のピリッと利く辛さの正体は「カプサイシン」といわれるものです。カプサイシンには、体脂肪を燃焼させ、新陳代謝を促進する作用(食べると汗をかきます)があることが知られていて、ダイエットには大変よろしい。

明太子は、専用の調味液に漬け込まれて独特の風味が生まれますが、調味液に長く漬けると同時に鮮度も失われます。そのため、短い熟成期間で十分なうまみを引き出すため、調味液や製法にもこだわりを持ちます。調味液のなかでも重要なポジションを占めるのが「昆布」。本格的なだしをとるために辛子明太子に使う昆布は「北海道産の羅臼昆布」が最高とされます。羅臼昆布は値段が高く、高級料亭や割烹店でしか使いません。また、行列のできるラーメン店では隠し味に羅臼昆布を使います。羅臼昆布はわずかな甘味と、コクのある旨味が特徴です。

おいしい食べ物には必ず縁の下の力持ちがいるものですね。