[251]石炭

石炭というのは古代植物が化石化した炭素資源です。地球のいたるところにあり、今でも埋蔵量は豊富ですが、固形物なため取り扱いが面倒なので石油に押されぎみ。採算面で合わなくなった炭坑は次々と閉山していきました。良い物であっても利益が出なければ見向きもしなくなる。資本主義のデメリットですな。

最近では原油の値上がりと現存資源の見直しということで、石炭がまた注目を浴びています。しかし、同時に環境問題も考えなくてはならず、石炭には課題がたくさんあるのです。

まず石炭は、単位エネルギーあたりのCO2発生量が他の化石エネルギーに比べ大きい(石油の1.25倍)。ということは地球温暖化が問題視され、空気中の炭酸ガスを減らさなければならないこの時期に石炭はチトつらい。また燃焼時に大量のSOx(硫化化合物)、NOx(窒素化合物)を排出します。これまた酸性雨の原因となります。更につらいことに、石炭は燃やすと大量の灰を生じることでその処理が大変。(石油は燃えカスが無い)。

このように難問山積み状態ですが、少ない資源を活用するには石炭は有望。ということで技術国日本の腕の見せ所というわけです。これらの問題を解決するための環境に調和した石炭利用技術をクリーン・コール・テクノロジーといいます。

ところで、炭坑というのは立坑を一気に深さ2000メートルくらいエレベーター(といっても金網の籠)で下り、そこから横坑を更に一時間くらい進んだところで石炭を掘り出します。中は大体38度から40度。人力ではなく機械で掘り出しますが、何かあっても地上に出るまで2時間かかる。つまり事故がったらほとんど助からないし、実際過去には事故は何回も起こり、犠牲者は星の数ほどいます。

危険な職場であるため、戦前では囚人労働者や朝鮮人労働者を使っていたといいます。詳細は『見知らぬわが町』-真夏の廃坑-中川雅子(葦書房、1995)に書いてありますので読んでいただきたいと思います。

当時の炭坑は国の持ち物でありましたが、牛耳っていたのは住友、三井、三菱などの財閥。当時の暗い面を償えとは言いませんが、今こそクリーン・コール・テクノロジーで暗い過去を払拭していただきたいと思うのであります。

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