[231]頼母子講(たのもし こう)

茅葺(かやぶき)の屋根は、夏涼しく冬はあったかい。しかも防音効果があり雨音がしないなどの優れた特徴があります。しかし、近年では茅は取れなくなってきました。茅葺の職人も減ってしまいました。ということで、自然の恵みを生かしたエコロジーの典型である茅葺屋根は、今や最も金と手間のかかる屋根となってしまったのです。

頼母子(たのもし)という言葉があります。これはいわゆる互助制度で、村落社会の助け合いの精神から生まれたもの。無尽(むじん)ともいいます。農村は季節的な行事をすばやく行う必要があり、そのために隣近所が助け合って生きていく習慣が発達してきました。

鎌倉時代の頃、村落社会の困窮者を救済する目的で行われてきた無尽は、ある人が金策に窮すると、友人らに「無尽を組んでくれ」と頼めば、10人ほどが集まって掛け金を出し合い、困っている人に最初に落札させたものです。

金だけではなく、民家の屋根のふき替えに、各戸で茅(かや)を出し合いました。茅はいつか来るだろう葺き替えに備え各戸で毎年こつこつと貯めておきます。葺き替えは屋根全体に及び、天気に良いときを見計らって一気に行う必要があるため、頼母子仲間が総出で1年に1戸ずつ茅葺屋根を葺き替えるのです。

ちなみに今でも、会津の町では「無尽、宴会にご利用ください」などの看板を料理屋などで見ることができます。昔の風習はその必要性がなくならない限り今でも生きつづける。互助精神が生きている会津は良い意味で「江戸時代」だといえます。

「会津の三泣き」ということばがあります。会津に住むと3回泣かされるという例えです。よそ者は会津に住むとまずよそ者扱いで泣かされる。次に交際が深まるとその人情の厚さに泣かされ、最後は会津を離れる別れのつらさで泣く。会津の地域性をよく表した名言であります。