[219]嫌気性微生物

人間は酸素がないと生きていけないですよね。空気中に程よく含まれた酸素は人間にとって有益ですが、酸素そのものは強烈な毒にもなりかねないのです。

スクーバダイビングで使う空気ボンベには2種類あります。一つは空気そのものを圧縮してボンベに詰めているもの。水中で吸っているのは圧縮された空気の圧を元に戻したもので、安全ですが容量の点で潜水可能時間が短い。

これに対して、酸素だけ詰めたボンベもあります。これは、人間の吐息に酸素を混ぜて循環させるので、ボンベの中は酸素だけ。純度の高い酸素を詰めるので長時間の潜水が可能です。しかし、吐息に混ぜる量を間違えると酸素中毒となり生命の危険にさらされます。したがって取り扱いの難しい酸素ボンベはベテランのダイバーしか使いません。

ところで、微生物の中には、酸素を好むものと酸素を好まないものがあリます。これらを簡単に分けると以下のようになります。

1)酸素がなくては増えることができないもの(好気性細菌)
2)酸素が無くも増えることができるもの(通性嫌気性細菌)
3)酸素があると死滅してしまうもの(偏性嫌気性細菌)

食中毒の話題でよく出てくるボツリヌス菌やウェルシュ菌は偏性嫌気性細菌です。以前「からしレンコン」問題になったボツリヌス菌は酸素にあたると死にますが、からしレンコンは真空パックであったのが却って仇になりました。真空パックが安全でないということを知らしめた事件です。

海産物によくつく腸炎ビブリオや話題の大腸菌のO-157は通性嫌気性細菌で、酸素が無くても増えることができます。つまりこれらも真空パックの中で生きつづけます。O-157は低温にも強いですから、冷蔵庫の中でも平気で増殖します。つまりここでいいたいのは、真空パックといえども食中毒に関してはなんら防御になっていないということです。

ちなみに混同しやすいものにレトルトパックがありますが、これは高温殺菌されていますので、中は無菌状態。したがって常温でも菌がいないので増殖するはずも無く、まったく安全です。