[143]椿事と珍事

珍事とは珍しいことが起こることをいう。椿事は実は誤用で、元は闖事という字が本当らしいのだけど、ここではあえて椿事と呼びたいと思う。椿事とは椿が咲くことであるが、これも珍しいことが起こった時に使う。椿事は主に吉兆を表す時に使うようだ。

椿は木ヘンに春と書く。春に花が咲く木は多いけれども、その中でも椿は春が待ち遠しい冬の季節に一番先に咲き春の訪れを知らせる花である。冬に咲くさざんかも椿の仲間だが、さざんかに混じって椿が咲くような暖かいお正月を吉祥として捉え、これを椿事という。「おや?椿が咲いている。こいつあ春から縁起が良いや」

昨日咲いていた椿の花が今日は落ちている。花の形を完璧に保ったまま首から落ちて、しかもその色が赤いことから縁起が悪いとされることもある椿。同じ花なのに両極端な意味合いを持つ珍しい花である。これも珍事(椿事)といえるかもしれないな。