[1282]プルトニウム

2011年3月30日、東日本大震災で被害を受けた福島第1原発の敷地内で放射性物質プルトニウムが検出されました。プルトニウムは自然界ではほとんど存在しないため、原発内から漏れたものであると確認されました。

で、このプルトニウムってどんなもの?

プルトニウムは原子番号は94、元素記号は「Pu」の放射性重金属です。放射能の半減期は24100年と大変長く放射線も強烈です。またプルトニウムは化学的にも猛毒なため科学者でも現物はめったに見ることができませんが、重さは水の約19.8倍と大変重く、常にガンマ線を出しており、その運動エネルギーが熱に変わるため常温でも「熱い金属」であるといわれます。

化学分野では原子番号92のウランが自然界に存在する一番大きい元素とされていました。そして原子番号93以降は原子炉などで人工的に作られるもののみ、とされていたのですが、しかし最近になって天然ウラン鉱脈でも微量のプルトニウムが生成されていることが確認されています。

なぜ、ウランより大きい原子番号の元素が自然で存在しないのか?というと、それは、たとえ地球ができたときに存在したとしても、放射性物質ですからそのエネルギーを放射して現在ではすでに崩壊してしまっているからです。

プルトニウムは効率の良い原子炉の燃料として使われます。普通、原子炉の燃料というとウランが思い浮かびますが、ウラン鉱脈から採れる天然ウラン238は安定していてそのままでは燃料になりません。

しかしウラン238に中性子を当てるとウラン238はガンマ線を出しウラン239という物質になり、その後ベータ線(電子)を2回出してプルトニウム239に変化します。プルトニウム239はウランと違って核分裂を起こしやすく、効率のよい核燃料となるのです。

さらにプルトニウムの核分裂によって生じた中性子はウラン238を同じ手順でプルトニウムに変化させ、しかも量が増えます。使っても無くならないどころか増えてしまうまさに夢の燃料なのです。この原理を利用したのが「もんじゅ」などの高速増殖炉です。

ちなみにプルトニウムは効率の良い燃料になるため、核兵器にも使われました。長崎に落とされた原爆はこのプルトニウム原爆です。広島に落とされた原爆はウラン原爆。違う種類の原爆を二つも落としたことが「日本はアメリカの実験台になった」と言われる所以です。