[203a]皆既月食(かいきげっしょく)

2000年7月16日から17日にかけて、久しぶりの皆既月食が見られる。今世紀最後で、しかも皆既月食の継続時間が1時間47分にも及ぶ今世紀最長の皆既食だ。日本国内は条件も良く、天候さえ恵まれれば地球の本影による食の全経過を見ることができる。開始時刻は、部分食が始まるのが16日20時57分、皆既食が始まるのが同22時02分となっている。

皆既月食は、太陽と地球と月が一直線に並び、太陽からの光によってできた地球の影の中を月が通過するときに見られる現象。つまり、地球を中心として正面には月が、真後ろには太陽があるから常に月は満月ということになる。「上弦の月の月食」とか「三日月の月食」というのは絶対に有り得ない。

太陽に照らされた地球の影には2つの種類がある。一つは「本影」と呼ばれる影で、太陽からの光全く届かない部分だ。もう一つは「半影」と呼ばれる影で、本影の外側に大きく拡がった部分だ。皆既月食とは、月が地球の本影の中にすっぽり入ってしまうことをいうが、完全に暗くなってしまうわけではなく、わずかに赤味をおびて見える。これは、地球の大気層を通過した赤い光が月面をわずかに照らすためだ。

今回の皆既月食は国内全域で見られる規模の大きいもの。天候に恵まれれば部分食を含めると4時間、皆既食だけでも1時間47分の天文ショーとなる。前回の皆既月食が日本国内で見られたのは、1997年9月のことだったが、台風が日本列島を直撃しわずかな地域のみで眺められただけだった。それだけに今回の皆既食は期待が大きい。

ちなみにこの時間月面からは、皆既日食を見ることができる。太陽を隠すのはもちろん我が地球。大気がないからさぞ鮮明に見えることだろう。