[1087]司法解剖と行政解剖

まずは新聞の記事から引用。

愛知県犬山市でけいこ中に倒れて急死した大相撲・時津風部屋の序ノ口力士、斉藤俊さん(17)=時太山(ときたいざん)、新潟県出身=について、愛知県警犬山署は28日、斉藤さんの実家がある新潟市内で遺体を行政解剖し、死因について「特定は困難だが、多発外傷によるショックが考えられる」と発表した。(6月28日23時20分配信 毎日新聞)

この記事を読んでふと思ったのが「行政解剖」という言葉。司法解剖はよく聞きますが、行政解剖というのはあまり聞きませんね。いったいどう違うのでしょうか。

まず、司法解剖から。

司法解剖とは刑事訴訟法168条1項「鑑定人による死体の解剖」、及び229条「検視」の規定に基づいて刑事事件の処理解明のために行う解剖をいいます。死体の死因などをに疑問がある場合、検察当局によって捜査活動の一環として行われます。つまり犯罪の匂いがする場合に行われる解剖。

司法解剖は刑事事件にかかわるため、解剖に際しては遺族の了解は得るものの、原則遺族の了解が無くとも職権で強制的に行なうことができる意味合いのものです。

犯罪にかかわる死体がすべて司法解剖されるかというとそうではなく、死因が明らかな場合は必ずしも解剖されるわけではなりません。解剖は専門の法医学者が執行します。よく聞きますが「監察医」が行うとは限りません。

一方、行政解剖は、刑事訴訟法以外の法律に基づいて処理される事件の処理のために行う解剖をいいます。この解剖執行は監察医が行ないます。なんらかの理由で24時間以内に医師の診断を受けないで死亡した場合などに行われます。行政解剖も原則遺族の承諾は不要です。

このほか監察医制度が行われていない地域では、大学の法医学教室などが中心となって監察医制度に準じた形で解剖を行うことがあります。これは法に基づいた行政解剖とはなりませんので遺族の承諾が必要、ということでこれは承諾解剖と呼ばれます。

【関連記事】
実験動物のはなし
死体は語る