[806]氷温

氷の温度と書いて氷温(ひょうおん)。この「氷温」は登録商標なので勝手に使うことはできません。氷温協会というのがあってそこで審査を受けて通ったものが晴れて「氷温」を名乗ることができます。たとえば「氷温熟成しじみ」「氷温熟成ウニ」など。

では、氷温とは何か?そして氷温を冠した食品とはいったい何?

氷温とは0℃の事。その温度で食品を貯蔵したり輸送したりすることを氷温貯蔵、氷温輸送といいます。チルドともいいます。冷凍貯蔵や冷凍輸送とどこが違いうのかというと、食品の美味しさが全く違うのです。

食べ物を食べたとき、大事なことは「美味しいこと」ですよね。この美味しさの元はたんぱく質が分解して生成されるアミノ酸のせい。魚や野菜、果物などをなるべく新鮮なうちに氷温貯蔵すると、細胞は自分自身を凍らせない反応が起こりアミノ酸を生成します。アミノ酸は「味の素」に代表されるように、うまみ成分です。これが魚や果物がおいしくするのです。

同じ冷やすにしても、冷凍は細胞自体を破壊してしまいます。従って、冷凍食品は生鮮品よりも味は必ず落ちるのが普通。しかし氷温はむしろ食品を美味しくするのです。「氷温熟成しじみ」「氷温熟成ウニ」などは氷温熟成することで「採れたて」よりも美味しい食品に仕上がっているというわけです。

流通の過程では氷温は冷凍に比べデリケートな衛生管理・温度管理が必要なため、コストがかかるのが難点。しかし、技術の発達で、海外からの輸入もチルド食品が入ってくるようになりました。冷凍食品ではない世界中の美味しいものがどこでも食べられるようになる日も近いことでしょう。