[1068]体温計

2013年5月25日

今日は1998年9月に書いたエッセイを手直しして紹介。

最近の体温計は耳に当ててぷしゅっとやると一瞬にして計ってしまうのもあるらしい。これなら小さな子供や動物などには便利であろう。ま~世の中便利になったものである。今日はそういう新しいのではなく、昔ながらの普通の体温計の話をする。

どうも昨日あたりから体調が悪く、熱もあるようなので体温計で熱を測ることにした。そんなには高くないと思うが体が熱っぽい。だが探してみると意外と見つからないのが体温計。我が家には電子体温計や婦人体温計も含めたくさんあったと思うのだが。

やっと見つけ出したのは古い昔ながらの体温計。しかし取り出してみて思わず見入ってしまった。なんと美しい造形だろうか。ガラスが微妙にカーブして先端には銀色の水銀が収まり、終端はきれいに閉じてある。これは機械で造るのであろうか?私は腕の立つ職人が作ったとしか思えない。これが機械で自動で作っているのなら表彰モンである。

裏を見るとTOSHIBAネオブルーと書いてある。そう。この体温計は表示がブルーなのである。普通は銀色で見えにくいのであるが、この体温計はブルーで見やすい。どう言う仕掛けになっているのか探ってみた。どうも内部のガラス管にブルーのシールがガラス管に沿って貼ってあり、それが水銀に反射してブルーに表示されているらしい。なかなかのアイデアである。これなら赤い表示や緑色の表示も可能である。

体温計は中に水銀が入っている。水銀は切れやすくまたくっつきやすいという性格がある。体温計は身体から離しても測った体温をずっと表示している。これは水銀が入った細い管が根元でくびれていて、体温を測っている間は上昇しているが、これ以上あがらなくなって下降するときにそのくびれで水銀が切れて上に残った部分がそのままで居るから体温を表示したままになっているのである。したがって表示を下げるには体温計を振って上に残った水銀を元に戻してやらなければならない。

ちなみに、婦人体温計というのがあるがこれは表示がさらに細かくなった体温計で機能的には普通の体温計と何ら変わりはない。女性は排卵の周期によって定期的に体温が上下するのでそれを継続して測ることにより自分の排卵日を調べ、家族計画に利用する。体温の上下は非常に繊細なので、婦人体温計は表示がさらに細かくなっているのである。

体温計の表示は42℃までしかない。これ以上あがったらどうなるのかと心配な方もいると思うが、人間の体は42℃以上には上がらないようにできている。
よく漫画で熱が上がって体温計を破裂させるような場面があるがあれは漫画である。

しかし、生命の妙とはいかなるものであろうか?温度は絶対0度から上は灼熱の何万度も幅があるのに、私達の生命はほんのわずかな温度の幅でしか生息を許されていない。まさに奇跡か、はたまた神の気まぐれなお遊びか…

ところで、熱を測った結果だが37℃であった。たいした事は無い。しかし安全をみて、仕事はしっかり休むことにした。