[801]刑務所と拘置所

2013年5月25日

昔は刑務所はそれはそれは怖いところでした。何しろ明治時代は監獄、それ以前は牢獄、牢屋などと呼ばれていました。獄ですよ、獄。ケモノ、言う、犬という字からして人間の住むところではないということです。

当然、囚人の人格などありませんでした。監獄・刑務所は怖いところ、だから悪いことをしてそういうところに入らない様にしましょうという、恐怖政治の一環でもあったわけです。そういった忌まわしい歴史の中で現在の刑務所があるわけです。

現在では、受刑者といえども人権は守られます。刑務所のシンボルでもあった高い塀は過去のものとなっていますし、受刑者の健康や精神状態も保護されるにいたっています。

さて、葛飾区小菅にあるのが東京拘置所。東京都府中にあるのが府中刑務所。刑務所と拘置所は似ていますが非なるものです。

裁判が終了したとえば「実刑三年」と刑が確定したとします。その場合は「刑務所」に入り、服役するわけです。一日一日その刑を務め、三年経てば刑は終わります。これが刑務所の中で行なわれる懲役といわれるものです。

ところが死刑囚の場合、刑=死刑ですから何十年拘置されていたとしても、死刑が執行きれない限り刑を務めたことになりません。したがって死刑囚が入れられるのは「刑務所」ではなく「拘置所」なのです。

刑務所は一日終われば出所が近いということで希望に満ちた一日であることでしょう。しかし拘置所にいる人たちはみんな「刑を待っている」のであり、それはそれは辛いことかもしれません。

関連する社会事象:2001年6月8日に発生した国立大阪教育大学付属池田小学校児童殺傷事件の犯人、宅間守は2004年9月14日午前、大阪拘置所で死刑が執行された。2003年8月28日に大阪地裁で死刑判決。弁護団は控訴したが本人が2003年9月26日に控訴を取り下げ死刑が確定。わずか1年で死刑執行という異例の速さだった。