[744]不飽和脂肪酸

人間や牛、馬などの動物は体温があります。体内の脂肪は体温では液状ですが死亡して体温が失われると脂肪が固まってきます。これは飽和脂肪酸。

一方魚やアザラシなど低温下でも活動しなければならない動物は体内脂肪が固まっては困ります。そのためそういった動物の体内脂肪は不飽和脂肪酸が多いのです。

いわゆる脂肪は炭素、水素、酸素でできた化合物。これらの3元素が鎖のようにつながってできていますがそのつながり具合によって3つのタイプの脂肪酸に分けられます。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3つです。脂肪にはこれらの脂肪酸が混ざって含まれているというわけです。

【飽和脂肪酸】

すべての原子が互いに結合していて安定(飽和)している形の脂肪酸です。動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く、肉、鶏、バターなどに多く含まれています。常温で固まるのが特徴です。動物性だけでなく植物性油脂のパーム油、ココナッツ油も飽和脂肪酸が多く含まれています。

飽和脂肪酸は「悪玉コレステロール」などと呼ばれ悪役になっていますが全く必要ないかというとそうではなくバランスよく摂ることが大事です。ですが現代人の食生活ではあえて意識的に摂る必要はありません。

【一価不飽和脂肪酸】

化学構造式で炭素と炭素の間に二重結合を一つ含むものを一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)といいます。オレイン酸は善玉コレステロール値を高めて悪玉コレステロール値を適量に調整するといわれており、オレイン酸を約70%強含むオリーブオイルは最近特に注目の的となっています。常温では液体状です。

【多価不飽和脂肪酸】

化学構造式で炭素と炭素の間に二重結合を二つ以上含むものを多価不飽和脂肪酸といいます。常温では柔らかい状態になっているか、液体状になっています。サフラワー油、綿実油などには注目のリノール酸、しそ油にはさらに注目のα-リノレン酸のほか、魚の脂肪は主に多価不飽和脂肪酸が多く含まれており、特に青魚に含まれるDHAやEPAなどは脳の発育に欠かせないものとなっています。

多価不飽和脂肪酸(リノール酸・リノレン酸など)は、人間の体内で合成することができず、食物から摂らなければならないため必須脂肪酸といわれています。ですが現代人の食生活では欠乏することはほとんどなくむしろ摂りすぎが問題になっています。一時期、動脈硬化等の予防にリノール酸が有効であるとし、積極的な摂取が推奨されましたが最近では言わなくなりました。

多価不飽和脂肪酸は過剰に摂取すると体内で過酸化物を生成し、動脈硬化や、悪性腫瘍の原因になる可能性もあることが最近わかってきました。結局のところやはり食物からバランスよく摂取するということに尽きるようです。

ちなみに「第六次改訂日本人の栄養所要量(厚生労働省)」では飽和脂肪酸、一価脂肪酸、多価脂肪酸を3:4:3に近づくように採るように推奨しています。

【関連記事】
[771]体温と代謝
[604]セルライト