[672]江戸指物

今日は日本の伝統工芸「江戸指物(えどさしもの)のハナシです。

指物(さしもの)というのは、釘やダボなどを使わず、また組み手も見せず、外観をすっきり見せ、しかもがっちり作る小物家具の工法です。

和箪笥等によく見られる引出しの蟻組み構造は日本伝統のもの(海外にもあるらしい)ですが、指物細工はこの組んである部分さえも見せない粋なつくりを誇りとしています。

指物は組み手だけで作るので高等な技を要求されます。しかもその元となる寸法取りに使うのは尺金というモノサシだけ。その物差しを使うので指物といわれたという説もあります。まさに後世に残したい伝統工芸です。

指物自体の起源は古いということはわかっていますが、確立されたのは江戸になってからとされています。貞享4年(1687年)に発行された江戸鹿子(かのこ)や元禄10年(1697年)に発行された日本国花萬葉記には江戸の日本橋や京橋等に指物を扱う職人町があることが記述されています。地方からも江戸に修行に来る職人が存在し、既に江戸初期には優れた産業として確立していたことがわかります。

江戸指物として作られる家具は茶箪笥等の小物ですが、製品の原材料として「島桑」と言う木材をを使うところにあります。三宅島でよく採れる取れる島桑は固く加工の難しい木材ですが、木目がすばらしくまた色艶も年月を経て味わい深いものとなります。

江戸指物は武家用、商人用、歌舞伎役者用が特徴ですが、ほかの地方で発達したものには茶道用具や朝廷用の「京指物」や静岡に伝わった「駿河指物」などがありますが、いずれも江戸指物の職人に習いに来てそれが全国に広まったものであるようです。