[659]水爆と原爆

物体は原子でできています。原子は更に原子核と電子でできていますが、この原子核をいじるとすごいエネルギーが生じます。これがいわゆる核反応です。

核を反応させるには二つの方法があり、ひとつは核融合です。我々の太陽はこの核融合で輝いています。もうひとつの方法は核分裂。核をばらばらにする事でエネルギーを取り出します。

水爆は水素を「核融合」してヘリウムになるときに発するエネルギーを利用したものです。一方原爆はウランやプルトニウムの「核分裂」のエネルギーを利用しています。分裂を誘発するのに大量の放射性物質が必要なため、取扱いはとても難しいのです。

原爆は核分裂反応を使いますが、水爆は太陽で起きている水素の核融合反応を利用し、理論上爆発力をどこまでも高めることができます。記録に残る最大の水爆は1961年に旧ソ連が大気圏内で爆発させたもので、爆発力はTNT火薬換算で推定58メガトン。広島に投下された原爆の約4000倍の威力があったとされています。水爆の核融合はそれを誘発するため原爆の核分裂を前工程で使います。それゆえ原爆に比べ水爆は洗練された技術が必要なのです。

人間を食らうという伝説の魔物が水爆実験によって太古の眠りから目を覚ます。放射能を浴びてさらに強大なエネルギーを身に着け「放射能火炎」で人間社会を焼き尽くすのが映画の初代ゴジラ(1954年)。ちょうどその年、太平洋のビキニ環礁で行われた米国の水爆実験で、日本の漁船・第五福竜丸が被ばく。ゴジラが「水爆の申し子」だという設定は、人類の水爆に対する恐怖心が高まっていたことの現れでもあります。

しかし、このような世界を壊滅するような兵器を人類はなぜ作るのでしょうか。もしかすると遠い将来そういった武器や技術力が必要になるのかもしれません。地球はあと50億年の寿命ですが、それ以上に生き延びるための方法として我等のDNAが研究させているのかもしれませんね。

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