[606]ホヤ(海鞘)

海の鞘と書いてホヤと読みます。食べたことありますか?おいしいという人と絶対イヤという人とがいる両極端な食べ物です。ちなみにホヤの語源は古語の宿木(ヤドリギ)のことらしい。岩に寄生する丸い状態が木の宿木に似ていることから来たのでしょうか?

ホヤは宮城県三陸地方の親潮が育てた海の特産物で、ソフトボール大のイボイボのその外観から海のパイナップルといわれています。リアス式海岸が続く牡鹿半島以北の宮城県太平洋沿いの沿岸各地では食用ホヤの一種マボヤの養殖が盛んに行われ、同県のホヤ生産量は全国の8割近くを占めます。

ホヤは貝の仲間のようですが脊椎動物のルーツと言われ、いわゆる貝類ではありません。雄雌同体で精子と卵子を海中に吹き出して繁殖します。ふ化直後の幼生はオタマジャクシのように海中を泳ぎまわり、やがて海底の岩などに付着、体長10~15cmの卵型に育ちます。このオタマジャクシ様の幼生には尾があり、その形態からわれわれ人間の先祖とまで言われています。その証明にもなるゲノム解析が現在進行形であり結果が待たれます。

さて、ホヤを食べてみましょう。マボヤの旬は5月から6月。包丁で殻をざっくり切り開き、山吹き色の身をそのまま味わいます。丁度桃缶のような食感で、歯触りが良く独特の甘味があります。この甘みはホヤ特有の微量の揮発性アルコール成分によるものですが、この独特の風味がダメという人もあり、このあたり「東北の珍味」と言われる所以でもあります。

身は生で食べるほか、キュウリなどとあえて酢の物にすることが多いですが、地元では、てんぷらや煮物にしたり、コメと一緒に炊いたり、雑煮にしたりとまさに家庭のおかずとして活躍しています。ホヤはスーパーなどで普通に販売されており、殻つきホヤが1個100円前後と安い。むき身や、蒸しホヤ、ホヤの塩辛などの加工品もいろいろあるようです。

しかし、ホヤの消費が宮城、岩手両県の沿岸などの地域に限られていて、なかなか他県に大きく広がらないのはその鮮度のせい。独特の甘みが鮮度が落ちてくると「臭み」に変わってしまうのです。したがってホヤを味わうには水揚げしている産地に赴き、評判の店でいただくのがいいです。ホヤが嫌いという人は多分水揚げして数日たったものを食べたからだといいます。

水揚げ直後の新鮮なホヤを食べに、こりゃ行くしかないですね。

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