[592]海洋深層水

海の深いところの栄養分が豊富な「海洋深層水」をくみ上げ、魚があまり取れない海域にまき、好漁場を人工的に造り出す実験が行なわれています。

海洋深層水とは海面から200メートル以下の太陽光の届かない深層の海水をいいます。光が届かないので海藻や植物プランクトンの光合成が行われないため、海水中の窒素やリンなどの栄養分が消費されずに残っているのが特長。

深層水の源は、南極やグリーンランド周辺で冷却された水が深海に沈み込み、それが数千年の歳月をかけて日本近海に到達したものだといわれています。

水温は非常に低く水深600mで9.7度。表層水と交じり合うこともほとんどないため太古の昔の状態を保っています。そのため細菌類による汚染や化学物質による汚染もない清浄な水でミネラル成分も多量に含んでいます。このミネラル成分の構成は人体に含まれるものと殆ど同じで、胎児が浸かる羊水と深層水の成分は非常に近いそうです。

米国の研究によれば、魚がよく取れる海域は栄養分が豊富な海洋深層水が水面に上がってくる「湧昇(ゆうしょう)流水域」とされ、これは海の全面積の0.1%に過ぎないにもかかわらず、世界の魚の約半数がここで生まれるといいます。

この湧昇流水域を人工的に作り出すには、海面に波の力を利用した自家発電装置を備えたポンプを浮かべて、海底の取水口から深層水をくみ上げ、水面上でプロペラなどでかき回し、表面の海水と混ぜあわせます。海水は潮流で拡散し、広い範囲で植物プランクトンが増殖するというわけ。約1年程度でプランクトンをえさにする魚が集まり好漁場ができる、ということだそうです。

しかし、不安材料もあります。太古から続いている環境を人工的に変えるわけですから生態系に悪影響を及ぼす恐れもなきにしもあらず。地上燃料や化石燃料を見つけた時はそれに喜び、未来のことを考えず枯渇するまで使いきってしまった過去をよく思い出し、慎重に事を運んでいただきたいと思います。

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