[567]酢

酢を飲むと身体が柔らかくなると信じている人は多いようです。読者の皆さんはいかがでしょうか。体操や柔道の選手は身体を柔らかくするということで毎日酢を飲んで稽古に励むといいます。しかし残念ながら酢を飲んだからといって単純に身体は柔らかくなるとは限らないようです。

なんでこのような説ができてきたかというと、どうも犯人は南蛮漬けではないかということです。

南蛮漬けはご存知のように小魚を油で揚げた後、酢につけこむと柔らかくなり骨ごと食べられます。これは骨の中に含まれるカルシウム塩が酢によって分解されるから。しかし酢を飲んだって酢がそのまま全身を巡るわけではないし、ましてや血液の中に酢が紛れ込んで全身を巡ることもありません。仮に酢が全身に回ったとしても、その酢が骨を柔らかくしたら大変なことになる。ぽきぽき折れてしまうがな。

身体が柔軟であるかどうかはじつは筋肉次第。それに多少靭帯や関節嚢が関係しているくらいです。したがって酢に頼るよりせっせと練習する方が身体を柔らかくする効果はあるというものです。

では酢を摂取しても無駄なのかというとそんなことはありません。酢は身体のバランスを保ち、料理に使うことで味を引き立て、また酢を使った分、塩分を減らすことができます。

日本人は昔から酢を料理に活用してきましたが、これも健康を維持するための生活の知恵なのです。

ちなみにイタリヤ料理も酢をよく使いますね。バルサミコ酢やワインビネガーはイタリヤ料理に欠かせません。イタリヤ料理は日本料理と並んで世界でも最も健康的な料理であるといわれている所以でもあります。

バルサミコ酢:

ローマ帝国の時代からイタリア料理に欠かせない芳醇な味と香りの酢です。バルサミコは「煮詰めた葡萄果汁」という意味でトレッビアーノという白葡萄を原料とし、その生の果汁を煮詰めて糖度を増し、栗や樫の木などで作った樽で発酵・熟成させた大変貴重な酢です。熟成には最低5年かかるとされ、なかには100年もの歳月をかけて作られたものもあるとか。ゆっくりとしたときの流れが作り出すスローフードの最たるものといえます。

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