[933]無リン洗剤

2013年5月18日

洗剤には「無リン」の表示がありますが、これは以前、家庭からの排水に含まれる洗剤のリン酸塩が河川の富栄養化を促進し、ひいては海で植物プランクトンの大発生を促し赤潮の発生原因になるとされたからです。

かつての洗濯用合成洗剤には洗浄力を高めるためリン酸塩が配合されていました。しかし1977年頃、琵琶湖で赤潮が発生し富栄養化が深刻な問題として取りざたされるようになりました。富栄養化の原因物質である窒素やリンの排出を減らすため、リンを含む合成洗剤を廃絶する動きが起こり1980年には、家庭用洗剤は全てリン酸塩を含まない無リン洗剤になっています。

さて、赤潮が発生すると赤潮の種類にもよりますが海水は酸素不足になり、大抵の魚介類は死んでしまいます。そうなると漁業は大打撃です。しかしその後、赤潮の原因はどうもリンではないようだ、ということが分かってきました。もちろんリンも多少は関係があるようですが、それだけではなくじつは農地に施す肥料が原因らしいことが分かってきたのです。

近代農法は化学肥料と農薬の交互使用による悪循環によって環境破壊をもたらし、その結果、海水の汚染は動かしがたい事実となっています。では、農法を有機農法に切り替えればいいのかというと、有機農法であっても河川の富栄養化は同様に進んでしまうのです。

環境を破壊するのは化学肥料だけでなく有機肥料も同様です。河川や近海の富栄養化は有機無機に関係なく肥料のやりすぎが原因なのです。作物が吸収できない肥料分は土中から雨で流され、海にたどり着きます。農法自体を変えない限り富栄養化は進むということなのですね。

赤潮の原因としてはほかにも海水の温度上昇や海底のヘドロなどが原因となっているようですが詳しいことはまだわかっていないのが現状です。最近ではプランクトンを個別に消滅させる装置も開発されて赤潮防止対策を行なうようになってきています。