[986]白銀比と黄金比

2013年5月18日

白銀比は「はくぎんひ」と読みます。英語表記ではSilver ratio。そのまんま銀の比率という意味です。これは縦と横の長さの比が「1:ルート2=1.41421356……」で、用紙サイズのA版に採用されているのがこの白銀比です。日本建築では古来よりこの白銀比を建築の単位として伝統的に使用しています。

大工が持つサシガネ(差金、指矩)は表面と裏面とでは違う目盛りが刻まれています。これは一本の丸太から柱などの角材を切り出すときに、丸い面を計ってそこから採れる最大方形の角材の寸法を知るためなのです。つまり丸太の直径を1.414倍の表目盛で計測し、求めた値の裏面にあたる値が最大方形の1辺の長さとなるのです。

一辺と他辺の比率が白銀比となる長方形を白銀長方形といいます。この比が用紙サイズとして用いられている理由は、用紙を長手方向に半分にしたときに元と相似の形状となるため、大きな用紙を切っていくだけで規格に適合した小さな用紙が得られるからです。A0の半分はA1。A1の半分はA2。A2の半分はA3。A3の半分はA4。…

さて、黄金比「おうごんひ」。英語で書くと「Golden ratio」これもそのまんまです。黄金比はこの世でもっとも美しい比率といわれ、西洋の美術によく取り入れられています。古いところではギリシャのパルテノン神殿の前正面の比率がこの黄金比で作られているといいます

黄金比とは線分をa,bの長さで2つに分割するときに、a:b=b:(a+b)が成り立つように分割したときの比a:bのことです。比率は1:約1.618です。この式から、黄金長方形から短辺の正方形を除くと、その残りがまた黄金長方形になることがわかります。

これを黄金分割といいますが、この分割された黄金四角形の辺上で正方形の角となる点を滑らかにつないでいくと螺旋が現れます。黄金四角形に内接する螺旋は自然界にも多く見られるといわれていますが、厳密ににはそうでもないらしく、オウムガイの螺旋や、ひまわりの花台の種の配列もこの黄金比で構成されているといますが、調べてみるとその定数は微妙に異なるようです。

よく言われるテレビの縦横比率は3:4。ハイビジョンテレビは9:16。旧型のテレビは白銀比に近いですが白銀比ではありませんね。同じくハイビジョンテレビは黄金比に近いですが、黄金比ではありません。

しかし、黄金比に近い比率が、自然界に多く存在し、また意図しない美術品にも多く存在する事実から、その比率は私たちの脳にも優しい刺激として作用するということは間違いないところです。