[995]お印(おしるし)

皇室の人が身の回りの物に名前代わりに付けるのが「お印(おしるし)」です。9月6日にお生まれの新宮さまのお名前は「悠仁親王(ひさひとしんのう)」、お印は「高野槇(コウヤマキ)」に決定しました。高野槇は常緑針葉高木で、高さ約30?40メートル、幹の直径は1メートルにもなるという巨木です。

一時期マツ食い虫が発生して日本中の松が枯れ始めるという事態がありましたが、そのときに松の代わりにもてはやされたのが高野槇です。松はよく「門かぶり」に仕立てられますが高野槇も同じような用途で使えるからです。丈夫で品のある高野槇。ご夫妻は「大きく、まっすぐ育ってほしい」との気持ちを表したといいますが、それも納得できます。

このお印、名前の代わりに入れるのですが、たとえば衣服などには「高野槇」とこの字が入ります。絵ではありません。またお印のみで名前を併記することもありません。これには篠沢教授が面白いエピソードをテレビで話していました。

今の天皇陛下が幼少の頃(皇太子のとき)、戦時中に日光に疎開したそうです。そのときにはすでに日本の敗戦色が濃く、もし負ければ皇太子の命はないものとその部隊は覚悟していたのです。敵が攻めてきたときのためにどうしようと皆で考えて決まったのが影武者をたてよう、つまり皇太子の偽者です。身代わりになる人間は裸になり、皇太子と衣服を取り替えたそうです。そのときに教授が見たものは「榮」の文字。つまりお印が下着を含めすべてのものに書かれていたとか。運よく、敵には見つからず戦争は終結し、皇太子さまは無事でした。そして今、平成の天皇になられたわけです。

天皇陛下のお印「榮」とは「桐」のことです。天皇陛下に限らず、皇族の方々のお印は植物が多いようです。ちなみに、現在の皇族の方々のお印は、次の通りになっています。

天皇陛下:榮(えい=桐)
皇后陛下:白樺(しらかば)
皇太子殿下:梓(あずさ)
皇太子妃殿下(雅子さま):ハマナス
皇太子同妃両殿下お子さま(愛子さま):ゴヨウツツジ
秋篠宮文仁親王殿下:栂(つが)
秋篠宮仁親王妃紀子殿下(紀子さま):檜扇菖蒲(ひおうぎあやめ)
秋篠宮文仁親王殿下お子さま(眞子さま):木香茨(もっこうばら)
秋篠宮文仁親王殿下お子さま(佳子さま):ゆうな
清子内親王殿下(清子さま):未草(ひつじぐさ)

清子さまが結婚された際、結婚式の引き出物のお菓子入れ(ボンボニエール)には、黒田家の家紋と清子さまのお印「未草」がデザインされたものです。