[1007]水琴窟(すいきんくつ)

日本の庭園は「和庭園」として世界中に認められ「盆栽=Bonsai」とともにその人気は高いです。自然石や灯篭、低木、高木を天地人(てんちじん)の配置にあしらい、池や蹲踞(つくばい)等の水を使っての造形も心和むものがあります。

天地人とは、天は導くもの、地は従うもの、人は中和するもの、という意味で、生花の手法としても使われます。和庭園を造るときにも、この配置で高い木の下に低い木、少し離れて中くらいの高さの木を不等辺三角形にあしらうものです。この絶妙のバランス感覚も和庭園ならではのものでしょう。

さて、見て美しい和庭園ですが、耳にも快い和庭園のアイテムがあります。それが水琴窟です。

水琴窟は、日本庭園の蹲踞(つくばい)や縁先の水鉢から導かれる水を利用した日本独自の庭園用音響装置。蹲の排水水滴により琴のような音を発生する仕掛けです。そのルーツは古く、江戸時代初期の作庭家でもある大名茶人「小堀遠州」が考えた蹲(つくばい)周りの排水装置「洞水門」から発祥したといわれています。

構造としては、底に小さな穴の開いた瓶(かめ)を逆さに伏せた状態で土中に埋め、底には一定の水位の水が溜まるように調整されています。上には手水鉢(ちょうずばち)が置かれておりそこから流れ落ちる水が伏せた瓶の穴を通して滴り落ちるようになっています。その滴り音が瓶の中で反響し琴の音のような音となり耳に心地よい響きとなるのです。

昔からある水琴窟ですが、あまり見られないのは、土やゴミが瓶の中に堆積して、10年もすると響かなくなってしまうからです。しかし近年、この水琴窟が
音風景として見直され、構造も研究されて長年メンテナンスをしなくても音が楽しめるようになってきました。

音の決め手は瓶ですが、大谷焼など水琴窟専用の瓶も焼かれており、一般住宅の庭でも大丈夫なような小ぶりの水琴窟も可能となっています。京都の古寺にしか見られなかった水琴窟をあなたのお庭に再現してみてはいかがでしょうか?