[1015]教育基本法

政府・与党は教育基本法改正案を12月8日の成立を目指して調整しています。一方で民主・菅氏「教育基本法は時間をかけて審議を」と提言しています。教育基本法は教育の憲法ともいわれ、非常に政治的要素の高い法律です。したがって十分な議論はされてしかるべきものでしょう。

教育基本法は日本の教育に関する根本的・基礎的なことを決めており、いわば国家が示す国民への教育の基本方針。前文と本則11条および附則からなる短い法律で、日本国憲法とセットで戦後の1947年に施行されたものです。短い法律こそ実は重要だったりします。

位置づけとして教育基本法は、第二次世界大戦前の教育勅語に代わるものと考えられています。教育勅語は、皇国思想、儒教思想に基づいており「教育ニ関スル勅語(教育勅語」として1890年に制定、戦前の教育理念を現しています。

今回与党が通そうとしている改正案は、この教育勅語に通じるものがあります。戦後の基本法はアメリカGHQが制定しただけのことはあり、個人主義が盛り込まれていますが、その反省から教育勅語のように「父母兄弟を大切にし夫婦相和し」という全体主義への回帰を目指したものとなっています。

誤解してはいけないのが、学校や教育について細かいことを決めているのは学校教育法という法律。教育基本法はこれとは別物であるということ、そして日本国憲法と密接な関係にあるというのが重要なポイントです。

政府与党は教育基本法を改定することで、その後に来るであろう「憲法改正」をしやすくするために模索しているのです。野党・民主党はこのことを承知しているからこそ「もっと議論を」と提言しているのです。

政府の目的とするところは、基本法改正後、憲法を改正し、集団的自衛権を発動できるようにすることです。そのためには、もっと国民に愛国心を持ってもらわなければならない。そのためにはまず国民教育を見直さなければならないというのは順番として正しい選択です。

明治、昭和初期生まれのご老人はすらすらと暗唱できるという教育勅語を以下に記します。忘れていた何かを思い出させるような、なかなか良いことを言っているように思います。

教育ニ關スル勅語(教育勅語)

朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ~育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン

斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ

明治二十三年十月三十日
御名御璽(ぎょめいぎょじ)

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