[1034]素人と玄人

素人は(しろうと)と読みますが、もともとはその読みどおり「白人(しろひと)」が語源です。「しろひと」とは顔の白い人、つまりこれといった芸がなく、ただ顔を白く塗っただけの大根芸人を指したものとされています。

その後、平凡なこと、芸が深くないことから転じて、ありのままという意味の「素人」の字を当てはめていうようになったようです。白は染まっていないので、初心な、経験が浅い、根が深くない、などの意味として使われるようになりました。

素人の反対語は玄人(くろうと)ですが、これも白人(しろひと)になぞらえて黒人(くろひと)から発生したものとされています。白人が素のままであるのに対して、黒人は熟練、熟達、経験豊か、彫り深い、多色であるなどの意味があり、すべての色を混ぜると黒くなることから黒人(くろひと)というようになったのです。

その後、黒人の黒いという字を玄に置き換えて「玄人(くろうと)」という言葉が定着するようになりました。玄という字にはもともと黒い、暗いという意味があり、玄米や玄武岩、玄海などはその色が黒いことからついています。しかし、玄という字にはもっと深い意味があるのです。

建物の入り口を玄関といいますが、玄関自体は特に黒くはありません。この場合の「玄」は「より深い道」という仏教の教えに基づくものであり、その深い道への入り口(門=関)が「玄関」なのです。お寺などで修行をする場合は、そのお寺の入り口こそ本来の「玄関」と呼べるものです。

陰陽五行説で登場する霊獣「玄武(げんぶ)」は北に位置する神様で四神星のひとつ。蛇がからみついた黒い亀の姿の神様です。奈良県明日香村のキトラ古墳の石室内の北側壁にも玄武が描かれています。ちなみに四神星は東=春=青龍(せいりゅう)、西=秋=白虎(びゃっこ)、南=夏=朱雀(すざく)、北=冬=玄武(げんぶ)となっています。

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