[1052]「あたりめ」と「するめ」

居酒屋のメニューで「あたりめ」というのがあります。これは説明するまでもなく「スルメ」のこと。炙ったスルメイカにマヨネーズが添えてあり、しょうゆを垂らしていただく。シンプルでローカロリーかつ定評のあるおつまみです。ただし、カロリーは低いですがコレステロールは結構ありますので、血圧の高い人は注意しましょう。

なぜ、スルメのことを「あたりめ」というのか?これは験(ゲン)を担ぐ商人たちが自分の商売に影響しないよう、悪い言葉を避ける忌み言葉に端を発しています。

「するめ」の「する」という言葉は「賭け事でお金を擦(す)る」あるいは「財布を掏(す)られる」などを連想させ、縁起が悪いということでむしろ反対の意味である「富くじに当たる=お金が増える」の「当たり」を使って「あたりめ」と呼ばれるようになりました。

同じような意味で「すり鉢」は「あたり鉢」と言い、ゴマをすってできる「すりゴマ」は「あたりゴマ」と言い換えます。

他にも、果物の「ナシ」は「ありの実」、川辺に生える葦(あし=悪し)は葦(よし=良し)、閉幕や閉会を意味する「お開き」もあえて反対言葉を当てることで忌み言葉を言い換えたものです。

あえて「するめ」を使うときは「寿留女」と書きます。「寿」の字を当てることでめでたさを表します。

そういえば、花嫁さんのメイクのときに顔を剃りますが、このときも「顔を剃る」ではなく「顔をあたる」といいます。

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