[1057]官僚と天下り

政府は諸悪の根源となっている天下りをなくそうとしています。しかしこの問題は難しい。なぜなら日本の官僚制度から慣習的に発生しているのが天下りだからです。総論は賛成でも各論になると中央省庁の官僚は猛反対するでしょう。
彼らからすれば、天下りがあるから今までがんばってきたわけですから。猛反対するのはそれなりにうまみがあるという証拠にもなるのですが。

そもそも天下りとは、中央省庁の官僚が退職後に一般企業や特殊法人・外郭団体などに再就職することをいいます。元々は神道用語で「神が天界から地上に下ること」をいいます。

神が地上に降り立つわけですから、向かえる企業もそれなりの地位を与えなければ失礼になります。また給与面でも優遇せざるを得ません。もっとも天下り人を受け入れると国から補助が出るらしいですが。

しかし元お役所の人間ですから、色々な面でメリットもあります。しかももといたお役所には自分のポストには後輩がいるわけですから色々な面で優位に立つことができます。受け入れる企業は見えない部分で利益を得ることができます。

官庁への人脈作りや情報収集、退職した官僚の持つ技術や見識など、人材を迎え入れるニーズがあることも事実です。しかしその中にはインサイダー情報もあるでしょうし、談合の温床になること必至です。だからこれを廃止しようとするのですが、天下りがなかなかなくならないのは官僚制度そのものにあります。

官僚、なかでもエリートとされるキャリア官僚、入省するときには大勢います。そしてほぼ横並びに昇進していきますが、最終的な最高ポスト「事務次官」は一つしかありません。

昇進競争でポストにあぶれたものが順次退職していく仕組みが早期勧奨退職慣行。この慣行では60歳の定年を待たずに退職するため、その後の受け入れ先が必要というわけです。

60歳を迎える前に天下りをした場合莫大な退職金が支給されます。また、天下り先から別の公社・公益法人に再天下りをする場合もあります。このときにも退職金が支給されます。これらすべて国民の血税からまかなわれます。これらの循環をなくすには、官僚制度そのものを見直す必要があります。事務次官が決まっても、それにあぶれた人たちが定年を迎えるまで働ける環境がまずは必要です。

ちなみに、天下り先の公益法人が密集しているのが虎ノ門。ビルの案内板にわけのわからない法人名がたくさん並んでいるようです。

※官僚とは?

行政機関において企画立案等に携わる公務員、特に中央省庁の一定以上の地位にある国家公務員を指す。

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