鬼怒砂丘慰霊塔(2)~無言の戦友に捧ぐ「軍馬鎮魂の賦」~


戦い終わって50年。無言の戦友よ、いままでお前の嘶きが俺の耳を離れない。忘れられないお前の姿。・・・許してくれ。俺はお前を捨ててきたのではない。毎日毎日苦楽を共にし、一緒に寝、一緒に歩いたお前と俺。・・・俺には自ら掘った壕があり、身体をくるむだけの小さなシートもあった。しかしお前には入る壕も被るシートさえもなかった。砲煙弾雨の中、撃つに弾丸なく、生きるに食もない。加えて世界一の豪雨地帯インパールで迎えた雨期、その戦場の底知れぬ悲惨さ。俺はお前を捨ててきたのではない。どうしようもなかったあの時のことを、お前もよく知っていてくれるだろう。日本内地から俺達と共に動員されて、大東亜各地を転戦した数万頭を数えるだろうお前達の全てが、日本内地に還ることなく、その尊い生命を散らし、平和の礎となった。俺は数少ない生き残りとして日本に復員し、いまでも戦友と語り合い、時にお前の姿を思い浮かべては慟哭の涙を流している。ここにお前達にしてやれるせめてもの供養として軍馬の碑を建て、心からお前達の冥福を祈る。俺も年老いて、近くお前の眠る黄泉へと逝くが、その時再びお前の姿を見つけ、その嘶きを耳にするのを楽しみにしている。 合掌

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