[1101]昭和を代表する作詞家・阿久悠さん逝く

「北の宿から」「UFO」など戦後歌謡史を彩る多くの名曲を送り出した作詞家・作家の阿久悠(あく・ゆう、本名深田公之=ふかだ・ひろゆき)さんが、1日午前5時29分、尿管がんのため東京都内の病院で死去した。70歳だった。葬儀は近親者で行い、後日「送る会」を開く予定。喪主は妻深田雄子(ゆうこ)さん。連絡先はオフィス・トゥー・ワン。(2007年08月01日asahi.com)

昭和を代表する作詞家の阿久悠さんが2007年8月1日に亡くなりました。享年71(70歳没)。謹んでお悔やみ申し上げます。

阿久悠さんはグループサウンズ幕開けともなる昭和40年代の歌謡曲・J-POP全盛時代にその綿密に計算され、かつこだわりのある歌詞で一世を風靡した作詞家です。当時テレビにはザベストテンなどの歌謡番組があふれ、ラジオは深夜放送などが元気よかった時代。それらと共に青春時代を生きた世代には忘れることのできない数々の歌謡曲。そしてその歌謡曲を支えたのが作詞家阿久悠さんなのです。

代表的な作品としてはロマンス(岩崎宏美)、津軽海峡冬景色(石川さゆり)、北の宿から(都はるみ)、舟唄(八代亜紀)、また逢う日まで(尾崎紀世彦)など。皆さんにも思い出のある曲ばかりではないでしょうか?

◆ロマンス

作詞 阿久悠 作曲 筒美京平 歌 岩崎宏美(1975年)

♪あなたお願いよ 席を立たないで
息がかかるほど そばにいてほしい
あなたが…好きなんです♪

ロマンスを歌っていた1975年の岩崎宏美さんは少女ともいえる16歳。にもかかわらずその歌詞は大人っぽく、当人も困惑していたとか。しかし阿久悠さんは岩崎君なら歌詞の色気がさわやかな色気に変わるから大丈夫、と太鼓判。

◆津軽海峡冬景色

作詞 阿久悠 作曲 三木たかし 歌 石川さゆり(1977年)

♪上野発の夜行列車おりた時から 青森駅は雪の中
北へ帰る人の群れは誰も無口で 海鳴りだけをきいている♪

この津軽海峡冬景色は19歳の石川さゆりさんが歌うこと、そして題名と、曲が先にできていて、それを元に歌詞を阿久悠氏に依頼したもの。三木たかし氏は青森や函館などの単に景色を歌ったものを考えていましたが、できあがった歌詞をみてびっくり。わずか三分間の歌詞に女の一生を織り込み、まるで映画のシーンを見ているような感動を覚えた、とか。

◆北の宿から

作詞 阿久悠 作曲 小林亜星

♪あなた変わりはないですか 日毎寒さがつのります
着てはもらえぬセーターを 寒さこらえて編んでます
女心の未練でしょう あなた恋しい北の宿♪

都はるみさんが1975年に歌ってヒットした1970年代を代表する名曲。第18回日本レコード大賞(1976年)大賞を受賞。この曲は男勝りの元気のよいキャラクターの都はるみさんに合わせて阿久悠さんは初めは違う歌詞を書いたそうです。しかしむしろそんな男まさりイメージに悩んでいた都はるみさんは書き直しを依頼。だったらとことん女々しい歌詞にしようということでこの歌詞になりました。

この歌詞が「女心の未練でしょうか」ではなく「女心の未練でしょう」と言い切っているところに注目。東京で不倫に破れた女の傷心旅行、北の宿でセーターを編む自分の未練を腹立たしく思う女心が描かれています。

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