[1153]琺瑯(ホーロー)

だいぶ前でしたか、ダッチオーブンを紹介したことがあります。これはナベ自体が鋳物の鉄でできており、蓋の重さもあいまっておいしい料理ができるものです。しかし、鋳物の鉄丸出しなので錆びるのが難点。ほうっておくと真っ赤になってしまいます。

最近人気のルクルーゼのなべ。これも鋳物の鉄でできておりおいしい料理ができると評判なのですが、その理由はやはり重さです。ダッチオープンと同じ原理です。しかし違うところは、ホーロー引きになっていて錆びないので手入れが楽なところです。これも人気の秘密かもしれません。

ホーローとは鉄やアルミニウムなどの金属材料表面にガラス質の釉薬を高温で焼き付けたものをといいます。七宝焼きも同じ原理。ガラスは化学的に非常に安定しており実験用具の素材としてもお馴染みです。耐久性もあるため、食器、調理器具、浴槽などの家庭用品も多く使われています。

ガラスは匂いが移らず塩分にも強いため、漬物や発酵食品の保存に重宝します。ルクルーゼなどのホーローの鍋は、強いけど腐食しやすい鉄や金属と、脆いけれど腐食しにくいガラスの性質を組み合わせた画期的な発明品といえるでしょう。

ホーローを漢字変換すると「琺瑯」という文字が出てきます。発祥は西洋でしょうが、シルクロードを伝ってインド中国を通過する際にこのような字になったと思われます。これを英訳すると enamel(エナメル)となります。ガラス質という意味ではなく釉薬という意味合いが強い言葉です。

釉薬は珪素を粉にしたようなものですが、珪素はいってみれば石。これを高熱で焼くと融けてガラスのようになって艶が出るのです。広島に原爆が落とされたとき、その爆発熱で地面の石が溶けてガラス質になり、キラキラ輝いていたそうです。原爆は地面にホーロー引きをしてしまったのです。

ホーローの製品はガラス質なので衝撃は禁物です。火にかける場合は急激な加熱・冷却は避けて下さい。もちろん空炊き禁物です。

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