[1193]木乃伊の作り方

木乃伊。これは「みいら」と読みます。古代エジプトの王家の墓に眠るあの「ミイラ」です。オランダ語のmummieの発音から木(ま)乃(み)伊(い)とあてられたようですが、木乃伊は「硬く木のように乾燥した指導者」という意味がありあながちいい加減な当て字でも無いようです。

ミイラは肉体の死後、腐敗よりも乾燥が勝っているときには自然とできますが、通常の自然環境では腐敗が勝ってミイラにはなりません。そこでミイラを作るにはそれなりの「作り方」があるわけです。

ミイラ作りは腐敗との戦いです。肉体が死滅すると細胞に含まれる自らの酵素により崩壊が始まり、雑菌などの助けを得て急速に腐敗が始まります。腐敗は水分によって促進されますから、水分を取り除けばミイラができやすい。肉体で水分が多く含まれるのはもちろん内内臓。従って古代エジプトではミイラを作るのに、死後まず内臓を取り出したといいます。

取り出した内臓は元に戻さず、水分を除去して壷などに納め、副葬品としました。内臓でも特に、小腸、胃、肝臓、肺は大事なものとされ布で巻かれてそれぞれ専用の壷に納められます。心臓だけは取り出さず、そのまま遺体に付けたままにしたようです。心臓は一番大事な臓器とされていたからです。

内蔵を取り出した死体は開腹したのでそれを閉じる必要があります。そのために使ったのが包帯状の布。ミイラといえば包帯巻きのイメージですが、この布がミイラのイメージとなったようです。

エジプトのような乾燥熱帯の地方ではミイラは作りやすいため、多くのミイラが作られ、残されたようです。しかしミイラには不老不死の薬効があると信じられ高く売れたため、墓を荒らすものも多く現れました。

しかし墓を暴くにも砂漠地帯。ミイラを探すうちに自分が脱水症状となってミイラになってしまう。これを喩えて「ミイラ取りがミイラになる」ということわざになりました。

エジプトのような砂漠ではミイラ化しやすいですが、日本のような多湿の環境でもミイラは存在します。仏教(密教)の苦行では即身仏といって自らミイラになる修行がありました。これを入定(にゅうじょう)といいます。

修行僧は木食といって木の実などを食べて命を繋ぎながらも水分を摂らず、自らを極度の脱水症状にし、生きたまま箱に入り、それを土中に埋めさせ読経をしながら入定したとされます。箱からは節をぬいた竹が空気穴として通され、読経の際に一定間隔で鈴を鳴らします。この鈴が鳴らなくなった時が入定のときとなるのです。この苦行は危険な修行ということで日本では明治時代に禁止されました。

【ミイラのかぶりものマスク

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