[856]カメ&アンコー

ニッポン放送の社長は亀渕昭信氏。深夜放送に青春をかけた世代にとっては懐かしい人です。1960年代、亀渕氏はカメの愛称でDJとして活躍、同じくオールナイトニッポンの人気DJ齋藤安弘氏とコンビ「カメ&アンコー」を組んでレコードも出したほどの人気者。その亀渕昭信氏はいつのまにかニッポン放送の社長になっていたのですね。

1960年代当時の深夜放送の仕掛け人は、ニッポン放送のオールナイトニッポンです。ティファナブラスのビタースィートサンバの音楽で始まるこの番組を当時の若者はみんな聞いていました。この深夜放送ブームに乗り、TBSはパックインミュージック、文化放送はセイヤングを同じ時間帯でオンエア。深夜放送は一つの文化を築き上げたといて過言ではないでしょう。

しかし、時代の推移とともに深夜放送も飽きられ、音の良いFM放送の台頭とともにAMラジオは斜陽産業へと向かっていきます。途中、FMに対抗してAMラジオステレオ化計画もありましたが、結局どうなったのでしょうか。

ラジオのスイッチを入れると、今なお当時の番組が続いていたりして驚きます。DJ・パーソナリティも当時の人がしゃべっていたりします。つまりAMラジオは深夜放送世代を相手に細々と運営する道を選んでしまったようです。ジジババ相手のAMラジオ。変わらぬ雰囲気を懐かしむ一方でこのままでいいのだろうかという不安も感じます。時が止まってしまったようです。

ライブドア事件の際にニッポン放送から異例の社員声明が出されました。ライブドアの経営参画に反対する内容です。しかしこの声明が本当だとすれば上場企業の社員とは思えない行動です。なぜなら上場企業の場合、労働者は株主を選ぶことはできないからです。また、経営者は株主が決めるものですから、労働者は経営者も選べません。労働者は黙々と働くのみです。

またそのなかに「堀江氏にはリスナーに対する愛情が無い」というようなコメントがありましたが、経営的視点からすれば民間放送会社の顧客はリスナーではなく広告主です。新しいリスナーの開拓を諦めてしまったにもかかわらず、このようなリスナーに媚びるようなコメントは元熱心なリスナーである私から見ても奇異に写ります。

ニッポン放送の社員の方からすれば、まさに足元をすくわれる様なこの事件。しかし、落ち着いてよく考えてみましょう。時代の趨勢や固まってしまったAMラジオの行く末を案じるならば、ライブドアに一票、という社員がいてもおかしくないと考えるのは早計でしょうか?

フジ日枝会長はテレビは無くなしちゃイカンといいますが、10年後20年後はどうでしょうか?おそらくニッポン放送をはじめ今のAMラジオも形は変わっているでしょうし、テレビもネット配信になって多様化しているでしょう。そのときに今のフジテレビが果たしてあるのでしょうか?大いに疑問です。

そうした変化を予測するなら日枝会長の言葉は現状維持を目的とした保身でしかありません。将来のフジテレビという会社および社員のことを考えるならば、ライブドアの参入やその他の選択肢も大いに歓迎する姿勢が大事です。ニッポン放送もフジテレビも「社会とともに生きる」と宣言する「上場企業」なのですから。私物化してはいけません。